ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

只今、内閣不信任案を国会で審議中。

 

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テレビをつけても、ネットを見ても、今日はどこも国会中継ばかり。極右政党のVOXがPSOE(社会労働党)とUnidos Podemosから成る革新系連立政権に対し、内閣不信任案を提出、下院(Congreso de los diputados)にて審議が行われているからです。

内閣不信任案は下院350議席の絶対過半数の賛成を得なければ可決されません。

現在の下院議席数の内訳は、PSOE(社会労働党)が120、PP(民衆党)が88、VOXが52、Unidos Podemosが35、Ciudadanosが10、その他の政党は上の図の通り。

VOXはその源がファランヘ党へ行きつく部分もあり、フランコ時代からの既得権益と結びついている部分もある極右政党ですが、ここ最近、国民の間に蓄積した不満を逆手にとってポピュリズムで一気に支持層を拡大し、昨年11月の総選挙ではPSOE、PPに次ぐ第3の政党となりました。民衆党が、汚職にまみれた幹部を刷新し、軸足を中道から右へ移したことを受け、その支持層がさらに右のVOXと中道に近いCiudadanosとに流れたことで、総選挙後の国会における政党勢力地図が大きく描き換えられました。

 

>この辺の経緯は過去の2つの記事でも説明しました:

元国王が姿を消した背景にあるスペインの政局

アルバレス・デ・トレドの解任

 

この内閣不信任案が可決されないことは、誰もが分かっています。

既得権層に支持されているVOXは、どんな手段を使ってでもUnidos Podemos(共産党系も含む)革新系連立政権を排除したい、それがだめでもできる限り疲弊させたいと頑張っている政党なので、不信任案が可決されなくても、とにかく、国会で現役政府に揺さぶりをかけることが目的なのでしょう。保守系のPPやCiudadanosに対して不信任案への賛成を呼びかけましたが、民主主義を逸脱した言動と行動を取っているVOXと一線を画してきたCiudadanosは全く興味を示しません。実質的にはVOXとほぼ同じような主張で現政権を攻撃し続けて来たPPはずっと態度を明らかにしてこなかったのですが、土壇場に来て、自分たちはVOXとは違うということを強調し始めています。

VOXのアバスカル党首の内閣不信任を訴える演説を聞いていると、「言霊」の怖ろしさを感じます。根拠となる明らかなデータのない(あるいは明らかにファイクであるデータに基づいた)糾弾のオンパレード。こうして、国会と言う場で激しい言葉を発して攻撃することで、国民の気持ちにはどんどんその言霊が入り込み、話し合いで歩み寄るという民主主義に代わって、お互いに罵り合い、糾弾しあうという対立が育っている気がします。

この内閣不信任案の審議のために、国会は丸二日間、他の法案の審議をストップしています。コロナ感染拡大が止まらず、全国的な感染拡大抑止策の検討が火急の課題である時期にも拘わらず、です。

 

国営放送ニュースの見出しが的を得ています。

Crispación política, desafección ciudadana y crisis del Poder Judicial: tres "virus" que perjudican la salud democrática

スペインを蝕む3つのウイルス:常軌を逸した政党間の権力争い、それに愛想をつかす国民、そして司法への信頼の失墜。

 

おしまい

戦う相手はコロナだよ! 政治争いしてる場合じゃないよ~

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(今朝の朝焼け)

 

も~、いいかげんしておくれ~! というのが今の気持ち。

スペインではコロナ感染が拡大し続け、一向に収束の気配が見えない中、ここのところ中央政府マドリッド自治州政府の「政治的戦い」が繰り広げられていて、そのせいで二転三転する感染対策措置にマドリッド州民が翻弄されています。

 

9月21日、マドリッド自治州が州政府としての感染対策措置を発出:ベーシック医療ゾーンという地域単位(ひとつのプライマリケアセンターに属す地域)ごとに10万人当たりの感染者数が1000名を超える地区に対して各地区からの出入りを禁じる自治州令を発出。ここで合計46のゾーンがロックダウンされる。

 

10月2日、スペイン中央政府がスペイン全土を対象に、10万人当たりの感染者数が500名を超える市単位でいくつかの感染データを基に判断して、各市からの出入りを禁じる厚生省令を発出。マドリッド州ではマドリッド市を含む合計10の市がこの出入り禁止制限の対象となる。マドリッド州はこの措置に反対の意を唱えるが、厚生省令は自治州令より優先されることから、州政府はこれを行け入れて感染対策措置を厚生省令に合わせて変更。しかしながら、10の市の市民の出入りを禁ずるロックダウンは基本的人権に反するとして厚生省令を裁判所に訴える。

 

10月8日、マドリッド州上級裁判所は自治州政府の訴えを受け入れ、厚生省令は基本的人権を侵害するため、マドリッド州における厚生省令に基づくロックダウン措置は無効と判決を下す。これを受けてマドリッド自治州内の規制措置は10月2日より前の状態に逆戻り。市民に混乱を招く。 

 

10月9日、中央政府の臨時閣僚会議が開かれ、「マドリッド自治州に限定した緊急事態」政令の発令が決定される。マドリッド自治州上級裁判所の判決よりも中央政府政令(緊急事態宣言)は法的優位にあるため、これによって、マドリッド自治州のコロナ対策措置は10月2日の厚生省令で定められた措置が再度適用される。

マドリッド自治州政府はこれに真っ向から反対し、10月2日以前の州独自の感染対策措置を採用すると主張(ロックダウンを適用するベーシック医療ゾーンの基準を感染率10万人当たり1000人から750人以上に引き下げ、合計51のゾーンのロックダウンとする意向)。

 

自治州政府が中央政府の「緊急事態」政令を受け入れれば、この法律に戻づく移動制限のコントロールは州政府に移譲されるのですが、現在のところマドリッド自治州政府はこれに反対していることから、本日、官報発令と共に「マドリッド自治州に限定した緊急事態」政令が発効し、法的強制力を伴う移動制限(マドリッド州内のマドリッド市を含む合計9の市に関して、その出入りを禁ずる)のコントロール中央政府が管理することになります。これを受けて、スペイン内務省は、国家警察と治安警備隊を合わせて7000名ほど動員してマドリッド州内のコントロールを実施すると発表しました。「緊急事態」政令という法的根拠ができたので、今後は違反した者には罰金が課せられる他、抵抗すると逮捕される可能性もある訳です。

 

スペインは10月12日が祭日なので、明日から3連休で出かける準備をしていたマドリッド市民などにとっては、直前で「待った」がかかった訳で、交通機関やホテルなどの予約キャンセルが相次いでいます。感染拡大が続く中、最も感染率の高いマドリッド市の住民が3連休を利用してスペイン国内や国外へ移動することのリスクは避けるべきだと、私個人としては思えるのですが、お上のお達しが二転三転して市民が迷惑を被ることには納得できませんねぇ。

 

しかし・・・・・政治的争いは抜きにして、中央政府自治州政府が一緒になってコロナに立ち向かってほしかったなぁ。 政治家の皆さん、戦う相手はコロナだよ!

 

おしまい

今日のスペイン:司法総評議会CGPJのメンバー更新の遅れ

司法総評議会(CGPJ)メンバー更新の遅れ

 

9月27日の記事の背景1で説明したとおり、スペインの司法の頂点にある組織、司法総評議会(CGPJ)の現在の構成メンバーの任期は2018年12月で終わっているにも拘わらず、政治的理由からメンバー更新ができないまま、既に2年近くにわたり、三審制の裁判制度のすべての裁判官任命などを含む非常に重要な役割を「暫定的」状態で行っている状況にあります。これは 「独立した司法の頂点にあるCGPJの任期は5年」 と定めたスペイン国憲法に違反する状態であり、とても 「異常」 な状況と言えるでしょう。

社会労働と民衆党が水面下で進めていた新メンバー選出に関する同意が、土壇場で民衆党のボイコットで破談になり、再度、一からCGPJ構成メンバー選出の交渉を進めねばならないため、現在、国会で喧喧囂囂とも言える審議が今まさに展開されている中、9月30日にCGPJは最高裁の新しい裁判官6名を任命しました。二大政党の水面下の交渉が進んでいた時にはCGPJ長官自身もこれら最高裁の6名の裁判官の任命はCGPJ更新後の新メンバーによって選出、任命されるべきとしていたようですが、現在の状況の中、社会労働党や政府からCGPJ改変後まで延期するように要請があったにも拘わらず、昨日実行されたようです。

 

さて、こんな「異常」な状況に対して、EUから警告が発せられました。

 

EU欧州連合)の政策執行機関であるEC(欧州員会)はこのほど、EU加盟27か国の法治主義に関する調査を実施し、その報告書が昨日発表されました。調査は大きく以下の4つの観点から実施されました:①国家の司法システム、②汚職摘発の法律とシステム、③メディアの多様性と表現の自由、④民主主義の均衡とその管理に関係するテーマ。

ポーランドハンガリー法治国家としての状況が注目を集める中で実施された今回の調査は、EU初の試みで、今後も定期的に行われるとのこと。

 

報告書の中でスペインに関する問題として最初に指摘されたのが、司法総評議会(CGPJ)のメンバー更新が正しく行われていない点で、CGPJは決して政治に影響を受けてはならないとしています。また、司法プロセスの効率の悪さ、つまり裁判に時間がかかり過ぎる点が指摘されている他、政権が変わるたびに新たな検察庁長官が任命されるなど、検察の行政からの独立と言う点も解決されるべき問題として挙げられています。 

EC (欧州委員会) の司法担当委員は報告書発表の記者会見で、「スペインにおける憲法解釈や裁判における判決内容は100%尊重されるべきという観点から、カタルーニャ独立派政治家の裁判は今回の調査の対象から外している。」と説明。また、「スペインにおける汚職摘発の予審捜査が活発に行われている点は注目に値するが、汚職を取り締まるシステムを定着させる必要がある」と指摘すると共に、国民の汚職に対する意識は他の国々より高いと評価。

行政の透明性と民主主義の担保に関しては、Defensor del Puebloなど、それらを管理するシステムが定着し、機能していることが伺えるとしています。

情報源:

https://www.lavanguardia.com/politica/20200930/483765749354/nombramientos-tribunal-supremo.html

https://www.rtve.es/noticias/20200930/bruselas-insta-espana-renovacion-del-cgpj/2043366.shtml

 

つづく

今日のスペイン:コロナ感染拡大を受けた新たな制限措置

今日から10月1日、コロナに明け暮れているうちに、あっという間にもう秋。

ここ数日、コロナ騒ぎに霞んでいますが、いろんなことが起こっています。少しずつ書いて行こうと思います。

とはいえ、やっぱり一番の注目はコロナなので、まずは、コロナから始めましょう。

 

コロナ感染拡大を受けた新たな制限措置

スペイン国内の感染拡大が止まりません。直近24時間の新たな感染者数、死者数、病院への入院およびICUに入る人の数も増え続けていて、特にマドリッド州の数字が恐ろしいことになっています。マドリッド自治州政府とスペイン中央政府厚生省のコロナ対策合同グループは先週立ち上げられてすぐに空中分解し、見解は今も対立したまま。

マドリッド以外の自治州政府から中央政府に対してスペイン全土に共通した感染対策の指針策定を求める声が上がり、医療従事者や感染症専門家などから対策が性急に必要であるとの警鐘が鳴らされる中、9月30日に自治州政府と中央政府の合同評議会にて賛成多数で新たな移動・活動の制限規則が可決され、本日10月1日付でBOE(スペイン中央政府官報)で発表されました。今後、各自治州の官報で公布し、48時間以内(10月3日の土曜日までに)に発効される予定。マドリッド自治州政府は今朝のBOE公布後、厚生省令を受け入れて自治州令を発効してこれらの制限措置を実施するとしていますが、同時にこれらの措置に対して反対の姿勢は取り続ける意向を示し、司法的手段に訴えると主張しています。

具体的内容は以下の通りです。

1.対象地域:以下の①~④に該当する地域:

①人口10万以上の市

②感染者数が10万人当たり500名を超える

③陽性率が10%を超える

④属する自治州が所有するICU施設のCovid19患者の占有率が35%を超える

2.基本的な移動制限

①該当する地域への出入りを制限(ただし、以下の場合は例外として認める):

医療施設へ出向く/職場への通勤や職業上必要な移動/学業のため必要な通学や移動/居住地へ戻るための移動/幼児・老人・身障者など介護や支援を必要とする人のところへの移動/金融機関への急を要する移動/司法関連機関や公証役場などへの移動/急を要する公共手続き/試験を受けるための移動/その他、急を要する理由を証明できる移動。

②該当する地域の道路を利用した車による通過、および該当地域住人の車による地域内の移動:可能だが、該当地域の規則に従うこと。

③人の集合は最大6名までに制限:同じ住居で暮らしていない人が集まる場合は、その目的が何であれ(家族や友人のパーティー、イベント開催など)、いかなる場所であっても(公道、公共施設、プライベートな施設など)最大6名を限度とする。職場や行政機関などは例外。

3.各種施設の収容数制限、安全距離、営業時間

>宗教施設:定員の1/3に制限、距離1.5m確保。

>葬儀施設:屋外は最大15名/屋内は最大10名。

商業施設および公共サービス提供施設:定員の1/2に制限、営業時間は22h00までに制限。

飲食施設およびゲームや賭け事の施設:カウンター利用不可/屋内は定員の50%に制限/屋外は定員の60%に制限/席間距離を最低1.5m/1グループ最大6名までに制限/営業時間は入店は22h00まで、閉店は23h00まで/飲食の宅配事業は時間制限なし。

>スポーツ施設:屋内は定員の50%に制限/屋外は定員の60%に制限/グループでのスポーツは最大6名までに制限。

>そのほかの活動やサービス:基本は定員の50%に制限。

★児童公園の閉鎖は規制に含まれず、引き続き利用可能(マドリッド州の45の制限対象地区では閉鎖)

情報源:https://www.rtve.es/noticias/20201001/medidas-madrid-sanidad/2043385.shtml

 

つづく

命の危機を乗り越えたルーシー、感謝と学び

 

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今日は、時事とは全く関係ない、ルーシーのことを書きます。

自分の今の気持ちを文字に残しておきたいという思いからです。人生の中には、節目となる出来事がいくつかあると思いますが、この一週間は私にとってそういうものでした。

 

このブログのタイトルになっているルーシーは今年の7月で11歳になったトイプードルで、子供の無い私たち夫婦にとってはある意味娘のような存在と言えるかも知れません。

セゴビアのブリーダーさんからルーシーを譲りうけたのは彼女が生後2か月の頃、2009年の10月。我が家に来てすぐ、白癬菌に感染していることが分かり、注射と内服液で治療しながら、ルーシーが動き回る環境を1日4回、塩素系漂白剤で徹底消毒して、ありがたいことに1カ月半で完治することができました。その後、1歳まではもりもり食べて元気に育ったのに、1歳になったとたん、餌を食べなくなり、それから、「ご飯を食べない子供の親」の苦労を知ることになります。最初のヒート後、避妊手術を受けさせることにしてお願いしたところ、手術直前に獣医さんから連絡が入り 「術前の血液検査の結果、この子は血液凝固に問題があることが判明したので、手術をすることは不可能」 と言われ、手術できずに帰宅。

 

5歳でアジソン病発症。最初は膀胱炎とか腎臓炎とか疑われ、獣医さんが試行錯誤している間にある日ショック状態に陥り、駆け込んだ救急病院でアジソン病と診断され、生死の境を彷徨った末に、危機を乗り越えてくれました。それ以降、新しい獣医さんにお世話になり、体内で生成できない副腎皮質ホルモンを薬で摂りながら、定期的に血液検査をして血中イオンを測定してホルモン剤摂取量を調整するという生活がスタート。

 

8歳でEPI(膵外分泌不全)発症。食べても食べてもどんどん痩せて行き、原因を調べた結果が、膵臓から分泌される消化酵素が出なくなってしまったということを獣医さんが突き止めてくれた時には、栄養失調状態。消化酵素を薬で摂らせ、消化しやすい特殊なドッグフードを与えると同時に、自力で摂れないビタミン類を注射で投与するという生活がスタート。

 

9歳ごろから、ヒートの後に子宮内に水が溜まるようになり、そこから子宮感染症になるリスクを心配するようになりました。獣医さんから、手術で子宮を摘出すれば、年に2回、この危険を恐れる必要がなくなる(この新しい獣医さんは血液凝固の問題は解消されていると説明)と手術を勧められたけれど、アジソンとEPIという持病を持っていて微妙なバランスの上で生きているこの子は、手術自体のリスクが普通の子の何倍もあることから、手術をせずに、年に2回のヒート後、エコグラフィーと血液検査で子宮の様子を観察するという生活がスタート。

 

11歳を迎えた今年7月末、マドリッドでは異常な暑さが続いており、ルーシーも水をがぶがぶ飲み、凄い量のおしっこをし、ぜいぜい言いながら、ぐったりしていましたが、人間同様この暑さのせいだろうと思っていました。8月になって、異常な暑さが去っても、ルーシーの様子が良くならなかったので、念のため、8月14日に獣医さんに診てもらったところ、なんと、糖尿病と診断されました。要は、膵臓の外分泌細胞が機能しなくなるEPIに加えて、膵臓の内分泌細胞も機能しなくなったことでインスリンが生成されなくなったために、食事から得たグルコースが体内の細胞に吸収されず血液中に流れ出てしまう、さらには尿中にも流れ出てしまうということが判明。

獣医さん曰く、「アジソン病の薬はインスリン効果を抑制する。ヒート後の2カ月間くらいは黄体ホルモンが分泌される時期(黄体期)で、黄体ホルモンもインスリン効力を抑制するため、高齢で避妊手術をしていない雌犬は黄体期に一時的に糖尿病の症状が出ることがある。ルーシーの場合、両者の要素が関わっているから、糖尿病はなるべくしてなったともいえる」 とのこと。避妊手術で卵巣と子宮を切除すれば糖尿のリスクも軽減するが、持病が3つ(アジソン、EPI、糖尿病)になってしまったので、手術自体のリスクも術後の合併症のリスクも前よりもさらに大きくなっているとの説明。生死にかかわるリスクを覚悟して避妊手術をして、その後3つの持病をコントロールしながら生活するか、あるいは3つの持病のコントロールに加えて年に2回、子宮蓄膿症という爆弾を抱えて生活するか、という2つの選択肢を前に、私と夫は悩んだ末に後者を選びました。

すぐにエコグラフィーで全身を見てもらい、とりあえずこの時点で子宮蓄膿症の疑いはないということで一安心。即日でインスリン投与開始。毎日、尿の糖度を測り、これが下がると血中糖度を測定しながら、ルーシーに適したインスリンの量を決めて注射する毎日が続きました。

 

ほぼ、安定した状態になったと安心し始めた矢先の9月20日(日)、朝ごはんの後のインスリン注射から30分後、ルーシーが立っては転び立っては転び、歩行できない!Hipoglucemia(低血糖症)の症状です。よりによって獣医さんがお休みの日曜日。アジソン病発見の時にお世話になった24時間対応の救急病院へ飛び込んで、とりあえず血糖値を上げる処置をしてもらい、入院。

 

翌日の月曜日午前中にエコグラフィーを実施した後、病院から入電があり、子宮蓄膿症と診断され、血糖値が急激に低下したのも子宮内の炎症が原因との説明。恐れていた事態が起こってしまった!3つも持病のあるルーシー、手術自体のリスクも大きく、術後のリスクも大きい、でも、手術しなければ死んでしまう。うろたえる私に電話の向こうのドクターが、「今からこっちに来て、直接話しましょう」と言ってくれたので、大急ぎで駆け付け、外科医で執刀医の女医さん、ルシア先生と話しました。選択肢の無い中、不安に押し潰されそうになる私に対して、「アジソン病や糖尿のことは麻酔医としっかり管理しながら、私が最速で手術するから、大丈夫!」 と力強く言ってくれたので、ルシア先生とルーシーを信じて、お願いする覚悟ができました。手術は、翌日、火曜日の朝一番にしてもらうことになり、月曜の夕方は夫と二人でルーシーの大好きなささみ肉を持って面会に行きました。

夫と共に家に戻ると、ルーシーのいない家の中がやけに静かに感じられ、二人とも言葉が少なくなっていました。執刀医の先生を信じ、ルーシーの生命力を信じると決めたけれど、この子の場合リスクは高いと以前からかかりつけの獣医の先生に言われていたので、元気なルーシーにもう二度と会えない時のための覚悟を心のどこかで決めている自分がいました。主人も同じだったと思います。

ややもするとネガティブな方向になだれ込みそうになる心。友人たちからのメッセージがそんな心を励ましてくれました。本当にありがたかったです。また、霊気マスターの友人から心を無にしてルーシーの元へポジティブなエネルギーを送る方法を教えてもらったおかげで、自分でも驚くほど穏やかな気持ちで手術前の一晩をやり過ごすことができました。

 

手術当日、コロナ第二波が酷いマドリッドなので、病院で待つことが許されず、自宅待機。朝の09h30に執刀医のルシア先生から「ルーシーの体調は良好、今から手術始めます。終わったら連絡しますよ」との連絡。いつもどおり掃除や洗濯、花の手入れをしたけれど、やはりどこかでざわつく心。霊気で心を無にすることで、なんとか気持ちを穏やかに保つことができました。10h50にルシア先生から入電、無事に手術を終え、今ルーシーは麻酔から覚め始めているとの連絡。ルシア先生ありがとう!感謝の気持ちでいっぱい。でも、これからがルーシーにとっての本当の闘い。術後の回復と同時に、卵巣と子宮を取ったことでホルモンバランスが変化する中、アジソン病の微妙なバランスを再調節し、糖尿病のインスリンバランスも再調節していかねばならない、すべてはルーシーの生命力にかかっている。内科の担当の先生が夕方に電話でルーシーの様子を教えてくださるけれども、今日は面会はできないとのこと。ルーシーの生命力を信じながら、家で静かに過ごしました。私はサロンのレースのカーテンを一日がかりで縫い上げ、夫は美味しいパエリャを作ってくれました。

 

病院の先生方は朝と夕方、電話でルーシーの状況を教えてくださり、許可が出たので、私は午前と午後に面会に行きました。翌日はまだどこか朦朧としていて足元もおぼつかず、口から食事を摂れなかったルーシー、次の日の朝は前日に私が届けたササミとご飯を食べたと内科の先生から電話で報告があり、即、面会に行きました。散歩させてよいとのことで連れ出したら、なんと自分からどんどん歩いていくではありませんか。7-8分歩いて戻ってくると、先生から今日午後に退院できますよ、言われて、ありがたくて、嬉しくて、泣きそうになりました。

こうして、木曜の夕方、ルーシーは無事に退院することができました。不安で心が折れそうだった時、力強い言葉で覚悟を決めさせてくれた執刀医のルシア先生、その素晴らしい技術と細やかな心遣いに感謝。術前、術後のルーシーのケアを親身になってしてくれたエンリケ先生、エドレイ先生に感謝。退院後の細かな指示を丁寧に説明してくれたイレネ先生、ありがとうございます。

 

我が家に戻って来てくれたルーシー、毎食、チキンと白飯のごはんを完食してくれて、おしっこもうんちもちゃんとしてくれて、夜はよく眠ってくれます。それが本当に嬉しくて、ありがたいです!

家に戻った翌日、朝一番でかかりつけの獣医、ハビエル先生がルーシーを診てくれました。病院での医療情報をチェックしてくれて、今後のアジソン病と糖尿病のコントロールについて指示をしてくれました。特に、卵巣と子宮を取ったことでホルモンなどのバランスが変化しているため、落ち着くまでは注意深く見守る必要があるので、不安なことがあったら週末でもメールで質問していいよ、とのお言葉。本当にありがたいです!

 

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今は9月27日(日)の夜。晩御飯を完食し、ルーシーは私の横で穏やかに寝息をたてています。

ルーシーが緊急入院してから今日までの一週間、本当にいろんなことがありました。

たくさんの病気をかかえながら、今回も命の危機を乗り越えたルーシー、頑張ったね! ルーシーにはいろんなことを学ばせてもらっているね、ありがとう!

そして、私の周りのたくさんの人たちからいろんな形で力を頂きました。心から感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました!

 

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おしまい

言霊の重み。新卒裁判官任命式に国王が欠席。

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ここ数日、最高裁長官であり司法総評議会(CGPJ)委員長であるCarlos Lesmes氏がやたらといろんなメディアに取り上げられていて、国王フェリペ6世に関してなにやら述べているけれど、いったい、何が起こっているのかしら? その背景と合わせて調べてみた。

 

何が起こったのか:9月25日(金)バルセロナにおいて、裁判官養成の最終かつ最高学府であるEscuela Judicialの今年度卒業生69名を裁判官として任命し、任地を発表する式典が開催された。毎年この式典にはスペイン国王が来賓として参加しており、今年も当初は参加予定だったが、直前に突如、欠席となった。当日、CGPJのCarlos Lesmes委員長が 「今日は国王においでいただけなかったのが非常に残念。国王も私に、参加できないことが非常に残念だと語っておられた」 と発言したことから政界やらメディアが騒ぎ始めた。

 

背景1:スペインの司法は行政や立法から独立しており、司法システムの頂点にあるのが、司法総評議会(CGPJ:Consejo General de Poder Judicial)で、三審制の司法システムに属するすべての裁判所の判事を任命するのはこのCGPJとなる。裁判官を養成する最高学府(Escuela Judicial)もこのCGPJに属する。

CGPJの委員長は最高裁長官がこれを兼任、その他に20名の委員から成り、任期は5年で、委員長を含む21名の構成員は国会にて議席数の3/5の賛成を得て任命される。社会労働党(PSOE)と民衆党(PP)の二大政党が政治を牛耳ってきたフランコ後のスペインでは、この二大政党が合意の上でCGPJ構成委員となる裁判官を選んできた。司法の独立を守るための最高府であるCGPJだが、その構成員を決めるのは国会であり、国会で多くの議席を占める政党が推す裁判官が任命されるという現実がある。

現在のCGPJメンバー構成は2013年12月に民衆党政権のラホイ首相と野党第一党社会労働党のルバルカバ総書記の話し合いの下で取り決められたもので、20名の委員の内、11名はPP民衆党推薦、7名はPSOE社会労働党推薦、1名はPNV(保守系バスク独立派政党/当時国会でキャスティングボートを握っていた政党)による推薦。委員長であるCarlos Lesmes最高裁長官もPP民衆党が支持した裁判官。本来、2018年に任期満了したはずの現在のCGPJ体制だが、その更新が政治的理由で先延ばしの状態が今も続いている。2013年当時は保守の民衆党が圧倒的な力を持っていたが、2018年にラホイ政権が内閣不信任で倒れ、社会労働党サンチェス内閣が立ち、その後2019年4月に行われた総選挙では国会での政党議席が割れ、最多議席を得た社会労働党が組閣を試みたが失敗、2019年11月に再度総選挙が行われ、民衆党は大敗、保守系政党が3つに分裂、革新系政党も単独組閣が無理で、大揉めの末に、革新系連立政府(社会労働党とポデモス・ウニダス党)が誕生したのが2020年1月。本来ならすぐさまCGPJのメンバー更新をすべきところが、かつてのように与党と野党という二大政党制が崩れ、保守系も革新系も分裂混迷状態の今、各政党の持つ勢力を反映させた 「均衡のとれたメンバーを選び合意に至る」 というプロセスが実は至難の業と言う状態。社会労働党は民衆党となんとか合意をとりつけてメンバー更新を図ろうと交渉を試みるが、民衆党にとってはできるだけ引き延ばしてCGPJの現行体制を維持したいところ。その訳は・・・・・・・・

CGPJはすべてのレベルの裁判所の判事任命権を持っているので、CGPJの現職メンバーは自分たちの任期は切れているものの、あらたなメンバーが選出されるまでは、属するすべての裁判所の判事の任期が終わる度に新たな判事を任命することができる。最高裁の裁判官しかり、全国管区裁判所の長官や裁判官もしかり。現在、民衆党に属する国会議員、自治州議員、市町村議員、あるいは民衆党が与党として行政を司っている自治州政府や市町村政府の閣僚などが被告として予審捜査や公判が進んでいる裁判が数多く存在する中、民衆党にとっては裁判の担当を自分たち寄りの判事に変えることが非常に重要となるから、自分たちにとって有利な任命権を持つ司法最高府のメンバー構成はできるだけこのままで引き延ばしたい。

 

背景2:カタルーニャ自治州政府のトーラ知事が最高裁の判決待ちの状況にある。2019年4月の総選挙の選挙運動期間中に、当時も自治州知事だったトーラ氏が、禁固刑に服しているカタルーニャ独立派政治家釈放要請のシンボルである黄色いリボンやプラカードを、自らが首長である自治州政府庁舎の正面に掲げていたことに対して、選挙管理委員会から撤去命令が出されたがこれを聞き入れなかったことから、カタルーニャ州上級裁判所に訴追され、1年半の公職からの追放という判決が下りた。これを不服とするトーラ知事は最高裁に控訴、公判が行われて来たが、9月17日に結審、現在判決が出るのを待っている状況。有罪判決が出ると、現職のカタルーニャ自治州知事が公職を追放されることになり、州議会選挙となるだろうけれども、もし、そうなった場合、独立派の州民が黙っているはずはなく、それこそ、2017年10月1日の州民投票の時以上の運動が起こるかも知れない。独立派の活動がコロナ禍のために霞んでいるとは言え、判決いかんでは一触即発の事態が起こりえる状況にある。

 

そして昨日、25日、お昼のニュースを見ていたら、民衆党副党首が 「サンチェス首相はじめとする現政権が新任裁判官の任命式典への国王の参列を拒否した。憲法にも反するこの政府の行為を我々は絶対に許さない!」 と言っているのが聞こえた。発せられた言葉だけを聞いて「えっ、何事?」と驚いた。

民衆党やシウダダノスの保守系政党は、この時期に国王がバルセロナの公式行事に参加することは独立派を刺激することになることを恐れた政府が国王に対して参加を取りやめる圧力をかけたとして、大反発。サンチェス首相に国会で事情を説明するよう要請。

サンチェス首相は沈黙を守り、カルボ副首相は 「政府は王室や国王の意向を掌握しているが、その理由に関しては聞いていない」 としている。

一方、社会労働党と連立政権を構成する革新系ポデモス・ウニドスの政治家らが、「国王が憲法に照らして政治的に中立な姿勢を保つのは当然であり、Lesmes委員長の発言は不用意であるな」 などとするSNSで発信すると、これに対して保守系政党がさらにヒートアップして激しい言葉で応酬。

 

相手を非難したり攻撃したりする激しい言葉が発せられると、それを証明する根拠とか理論がなくても、言葉自体が独り歩きをして、言霊となって人々の気持ちに入っていく。最近の政界を見ていてそう感じる。

 

25日に行われた式典で任命された新人裁判官のひとり、27歳のクリスティーナ・メンデス判事の 「私たちの晴れの日が、すっかり台無しになってしまった。こんな状況に嫌気がさして式典にこなかった同期もいる。司法が政治や行政機関の思惑のために利用されるようなことは絶対にあってはならない。今日から裁判官となる仲間たちと共に、決して外部の圧力に影響されない裁判官になろうと思う」 という言葉が刺さる。

 

おしまい

コロナ禍を政権争いに利用するのは止めて!

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前回の記事に書いたように、9月21日(月)からマドリッド州にある医療ゾーンの内、37地区でロックダウンが始まりました。しかし、危惧した通り、記事内でも挙げたような理由から、実際的な効果はほとんど得られていない模様。そして、これら37ゾーンだけでなく、マドリッド全体で感染状況は刻々と悪化しています。

去る21日(月)にマドリッド州のディアス・アジュソ知事と中央政府のサンチェス首相が、その政治的相違を一旦脇に置いて、マドリッドにおけるさらなるコロナ悪化を防ぐために会談し、州政府と中央政府の合同コロナ対策グループを立ち上げるという結論を得て、23日(水)には早速、合同対策チームの初会合が持たれて緊急かつ具体的対策を練った、はずだったのに・・・・・・

25日(金)中央政府厚生大臣と、マドリッド州政府の厚生課責任者が別々に記者会見を行い、その内容がまったく違う!イジャ厚生相は10万人当たりの感染者数が500名以上のゾーンは外出・移動規制の対象とすべきという専門家の意見に基づき、ロックダウン対象をマドリッド州全域に広げるべきと主張する一方で、マドリッド州政府はロックダウン対象は10万人当たりの感染者数が1000名を超える地域に限るとし、既に月曜から規制が実施されている37ゾーンに加えて、来週月曜から新たに8つのゾーンをロックダウンの対象に加えると発表。

そして、ディアス・アジュソ知事は中央政府厚生大臣が州全体をロックダウン対象にすべきと述べたことに対し 「中央政府マドリッド州を差別・敵視している」 と、またまた政治的な発言をし、彼女を知事に押し上げた民衆党のカサド党首も中央政府のコロナ対応を批判。マドリッド州民としては、コロナのリスクに危機感を感じると同時に、州政府のコロナ政策における計画性の欠如やら、政党がコロナ禍を政権争いの道具にしていることやらに、暗澹たる気分に陥ってしまいます。

我が家はこれらのゾーンのひとつにありますが、実際、地図上の限界ラインを越えて買い物に行ったり、公共交通機関を利用したりする際に、現時点ではまったく何のコントロールも見られません。完全に州民の良心と自粛に頼っている状況です。田舎の村などではなく、大都市の一区画をそこだけロックダウンするというのは、絵に描いた餅としか思えません。

自治州政府はこれらのゾーンからの出入りをコントロールするためとして、中央政府に対して国家警察(内務省に所属)、治安警備隊(防衛省に所属)および緊急災害救助部隊(防衛省に所属)の出動を要請すると共に、医療現場の逼迫を解消するために、マドリッド州以外の自治州の公共医療サービスに属する医師や看護師のマドリッドへの派遣を可能にするための緊急な法整備も要請しているようです。今、州民として、つくづく思います、こうしてお尻に火がついてから右往左往するのではなく、なぜ医療現場の声を聞いて第一波の後で医師や看護師の数を増やし、感染追跡サービスを整備して来なかったのか?!と。

 

おしまい。