ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

今日のスペイン:司法総評議会CGPJのメンバー更新の遅れ

司法総評議会(CGPJ)メンバー更新の遅れ

 

9月27日の記事の背景1で説明したとおり、スペインの司法の頂点にある組織、司法総評議会(CGPJ)の現在の構成メンバーの任期は2018年12月で終わっているにも拘わらず、政治的理由からメンバー更新ができないまま、既に2年近くにわたり、三審制の裁判制度のすべての裁判官任命などを含む非常に重要な役割を「暫定的」状態で行っている状況にあります。これは 「独立した司法の頂点にあるCGPJの任期は5年」 と定めたスペイン国憲法に違反する状態であり、とても 「異常」 な状況と言えるでしょう。

社会労働と民衆党が水面下で進めていた新メンバー選出に関する同意が、土壇場で民衆党のボイコットで破談になり、再度、一からCGPJ構成メンバー選出の交渉を進めねばならないため、現在、国会で喧喧囂囂とも言える審議が今まさに展開されている中、9月30日にCGPJは最高裁の新しい裁判官6名を任命しました。二大政党の水面下の交渉が進んでいた時にはCGPJ長官自身もこれら最高裁の6名の裁判官の任命はCGPJ更新後の新メンバーによって選出、任命されるべきとしていたようですが、現在の状況の中、社会労働党や政府からCGPJ改変後まで延期するように要請があったにも拘わらず、昨日実行されたようです。

 

さて、こんな「異常」な状況に対して、EUから警告が発せられました。

 

EU欧州連合)の政策執行機関であるEC(欧州員会)はこのほど、EU加盟27か国の法治主義に関する調査を実施し、その報告書が昨日発表されました。調査は大きく以下の4つの観点から実施されました:①国家の司法システム、②汚職摘発の法律とシステム、③メディアの多様性と表現の自由、④民主主義の均衡とその管理に関係するテーマ。

ポーランドハンガリー法治国家としての状況が注目を集める中で実施された今回の調査は、EU初の試みで、今後も定期的に行われるとのこと。

 

報告書の中でスペインに関する問題として最初に指摘されたのが、司法総評議会(CGPJ)のメンバー更新が正しく行われていない点で、CGPJは決して政治に影響を受けてはならないとしています。また、司法プロセスの効率の悪さ、つまり裁判に時間がかかり過ぎる点が指摘されている他、政権が変わるたびに新たな検察庁長官が任命されるなど、検察の行政からの独立と言う点も解決されるべき問題として挙げられています。 

EC (欧州委員会) の司法担当委員は報告書発表の記者会見で、「スペインにおける憲法解釈や裁判における判決内容は100%尊重されるべきという観点から、カタルーニャ独立派政治家の裁判は今回の調査の対象から外している。」と説明。また、「スペインにおける汚職摘発の予審捜査が活発に行われている点は注目に値するが、汚職を取り締まるシステムを定着させる必要がある」と指摘すると共に、国民の汚職に対する意識は他の国々より高いと評価。

行政の透明性と民主主義の担保に関しては、Defensor del Puebloなど、それらを管理するシステムが定着し、機能していることが伺えるとしています。

情報源:

https://www.lavanguardia.com/politica/20200930/483765749354/nombramientos-tribunal-supremo.html

https://www.rtve.es/noticias/20200930/bruselas-insta-espana-renovacion-del-cgpj/2043366.shtml

 

つづく