ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

カストロ判事、タックスヘブン、ICIJ、ファルシアーニ・リスト

カストロ判事への圧力

予想はしていたものの、やはりCastro判事の周りは凄いことになってます。
4月3日に判事がクリスティーナ王女を起訴する判断を下したのが昼過ぎだったと思いますが、数時間後にはラジオ、テレビなど様々なメディアは凄い反響。
同日午後、国営放送のラジオ番組でこの件に関する感想を問われた、民衆党国会議員で下院経済委員会の民衆党スポークスマンであるMartinez Pujalte氏は、「クリスティーナ王女の起訴を決めたCastro判事の判断には、世間やメディアの注目を集めたいという気持ちや個人的な感情に基いている部分が多分にある」 とのたまわった。これほど第一線を越えた発言とまで行かないものの、王女の起訴という事実はスペインという国のブランド価値を汚し、スペイン経済に打撃を与えるという「Castro判事は非国民だ」的発言もありました。

4月4日、検察が判事の起訴を不適当として控訴したことを受けて、Castro判事は4月27日に予定していたクリスティーナ王女の喚問を、最高裁判所がこの控訴に対する決定を下すまで延期することを決定。
同日、国王は古くからの友人であり現在のスペイン憲法の生みの親(Padres de la Constitucion)の一人で著名な弁護士でもあるMiquel Rocaに自ら電話してクリスティーナ王女の弁護を依頼したそうですが、これを受けて中央政府の副首相Sainz de Santa Maria氏は即、「王女の弁護にかかる費用は王室の負担であり、国庫からは一切負担されない」と釘を刺しておられました。

各新聞の見出しにもこの記事がセンセーショナルに踊り、テレビ各局のトークショー保守系、リベラル系など多様な政治色のコメンテーターらを揃えてこのテーマでヒートアップ、喧々諤々、まぁうるさいうるさい。

そんな中、渦中にある王室の一員フェリペ王太子は、姉であるクリスティーナ王女の起訴が決まった翌日の4日、スペインの司法システムに判事として就任する新人裁判官らの就任セレモニーに出席し、「今日のような難しい局面の中においても、社会の秩序と平和を守る裁判官の重要性を改めて認識しその社会的役割を称賛」するスピーチをしました。非常に微妙な状況の中、胸中は決して穏やかではないはずの王太子、その冷静で真摯な姿は非常に印象的でした。



爆弾低気圧 

ところで、日本は爆弾低気圧の襲来で大荒れ、春の嵐が吹き荒れたようですね。この「爆弾低気圧」という言葉、昔は聞いたことがなかったのに、最近よく耳にします。多分これに相当するスペイン語はBorrasca ciclogenesis explosiveだと思うけど、やはり最近良く耳にします。物凄い急傾斜の気圧の谷が物凄い短時間に発生しちゃって、想定外の強風やら普通では考えられないほどの大量の雨が一挙に降るというという現状、最近、本当に多いです。
スペインというかヨーロッパも今年1月末にこれが襲い、フランスやらドイツやらに想定外の豪雪を降らせて、フランクフルト、パリなど主要空港がほぼ閉鎖状態になったり、鉄道にも多大な影響を与え、スペインも北半分は凄い雪、南半分は豪雨で大変な被害が出ました。同じ頃、南半球のオーストラリアでは連日気温が45度を超え、カラカラの草木が発火して次々に山火事が発生していました。

余談ながら・・・・、爆弾低気圧が降らせるような雨を、日本だと「土砂降り、車軸を流すような雨、バケツをひっくり返したような雨」、英語だと「It rains cats and dogs」のような面白い表現がありますが、スペイン語だと何だろうと考えると 「Llueve a cántaros」でしょうか。Cántarosというのは大きな水差しのようなものなので、やはりバケツをひっくり返したような、というニュアンスなのでしょうか。「Llueve a cielo roto」という言い回しも聞きますが、これは「空が破けちゃったような降り」という感じ。

そして、2月末にようやく気温も上がり春らしくなったかと思いきや、3月は来る日も来る日も雨、雨、雨・・・スペインは、60年来で最も降雨量の多い3月だったそうです。セマナ・サンタの連休もずっと雨、プロセシオンを楽しみにしていた人たちにとっては本当に恨みの雨が降り続きました。そして4月になり、もういい加減春が来るだろう、と思いきや、まだまだ続く雨降り。南のアンダルシア地方は、降り続く雨に、河川の水量が堤防ぎりぎりまで上昇、その上、上流にあるダムも限界水位を超えて放水を余儀なくされていたりで、グアダルキビール川など主要河川流域の町や村で冠水や洪水、橋が流されたり、土砂崩れといった被害が続出。
雨だけでなく、気温も一向に上がらず、非常に寒い。マドリッド市街地でもここ数日最低気温が0℃から1℃、最高気温も10℃止まり、市内北の山よりでは最低気温マイナス3℃とか。

そんな中でも、草木は着々と芽を膨らませて春はすぐそこまで来ているのですが・・・
スペイン経済の春は・・・いつ来るのやら、という感じ。



タックスヘブンを作る人と使う人

ブログにも書きましたが、とにかく汚職まみれの政治家たちに国民がうんざりしている今日この頃です。
政治家だけでなく、とにかく、お金を持っていればいるほど、それを絶対手放したくないのでしょうが、超富裕層の脱税が後を絶たない。それこそ敏腕エコノミストコンサルタントにして、税金を支払わない方法の飽くなき追求が行われているのですから、税務署はそんなハイテク脱税術に対抗する時間も労力も足りない。それよりも、何の知恵も術ももたない庶民から税金を搾り取るほうが容易で手っ取り早いのでしょう。

お金のあるところにはさらに多くのお金が集まっている訳で、それに本来課されるべき税金がちゃんと徴収できていたら財政赤字もなくなるんじゃないのかしら。お金のないところからさらにお金を搾取して、帳尻を合わせようとしても、所詮それは無理な話。
文明や科学の進歩と発展が人々のクオリティ・オブ・ライフを良くしていくはずが、一部の超富豪がバケーションで宇宙旅行に行ける様になる一方、最先端医療を備える国でもお金のない人は医者に診てもらうことも治療を受けることもできない。銀行が差し押さえた家屋が空っぽのまま放置される一方、職を失いローンを払えずに家を差し押さえられホームレスとなった人たち(その家族も含めて)が路頭に迷っている。 誰が悪いのか、どこに原因があるのか、いろんな考え方があるだろうけど、何かが間違っているんじゃないだろうか。先人たちの努力は、こんな世界やこんな社会を創るためではなかったはす。



International Consorcium of Investigative Journalists

4月4日のエル・パイス紙にICIJ(International Consorcium of Investigative Journalists)の記事がありました。これは世界46か国のジャーナリストが参加、著名なメディア(BBC, Washington Post, Le Mond, Guardianなど)が協力している組織で、いわゆるTax Paradise(カリブ海に浮かぶ島々)の銀行に隠し口座を所有して本国の税金を逃れている世界の超富豪、セレブリティー、企業などの情報を突き止め公表することを目的としているのだそうです。

このコンソーシアムが調査によって入手した情報の量は、2010年にWikileaksが公表した米国外務省関連の書類の160倍にもなるそうで、約13.000件の情報を手に入れたとか。その一部が、公表されており、セレブリティーのリストの中には、マドリッドにあるティッセン・ボルネミッツァ美術館のオーナーも入っています。ティッセン・ボルネミッツァ男爵の未亡人カルメン夫人は、絵画を始めとする美術品の蒐集家として有名ですが、サザビーやクリスティーなどが主催するオークションでの絵画の購入などはクック諸島にある金融機関を通じてされるのだそうです。 
このコンソーシアムの調査結果は4月15日まで、ここで閲覧できるるそうです(英文のみ)http://www.icij.org/offshore

さて、ICIJの調査に関するニュース、TVE(スペイン国営放送)のニュースではあまり取り上げられていませんでした。
何をニュースにするか(しないか)、去年1月の政権交代後、TVEディレクター陣の交代以降、その基準がずいぶんと変わってきているような気がするのは私だけかしら。 



Lista de Falciani

Herve Falciani という名前、日本ではあまり聞かれないのか、インターネットで検索してもほとんどヒットしないようです。
HSBC銀行ジュネーブ支店の元コンピュータエンジニア、2009年に13万件にも上る世界中の金持ちの脱税口座のリストを盗んで逃げ、アルカエダ支持者を装ってその情報を売りつけようとした若者。スイス政府の要請でインターポールで指名手配されている人。
たまたま、昨年の夏バルセロナでクルーズ船が上陸し、乗客のパスポートコントロール中、全く予想もしない場面で彼の身元が割れ、スペイン警察が逮捕、現在、全国管区裁判所にてスイス送還の可能性を審理中。

彼の持ち出した情報のおかげで、イギリス、イタリア、フランス、スペインなどの政府は既に多くの脱税者を摘発することができ、滞納していた税金を追徴金ともども回収しているので、これからも彼の持っている情報にまだまだEU諸国にとっては役に立つものが一杯、というところ。スイス政府の身柄引き渡し申請に対し、今のところスペインの全国管区裁判所は回答を保留中。

スイスで違法なことがスペインでは違法ではなく、スイスで合法な(脱税口座)ことがスペインやその他の欧州諸国では犯罪な訳で、このHerveさん、スペイン国内にいるかぎり「拘留中」である身の安全が保証されているけど、スイスに帰ったら「犯罪者」。彼はスイスの金融機関にとっては裏切り者であり、世界中の金持ちにとっては頭痛の種。

彼が持ち出したリストにはスペイン人名義の口座も3000件ほどあったと言われており、そのうち659件に関しては、国税局はこの情報が司法機関の手に渡る前にこれら「税金滞納者」に対して追徴金を乗せた金額の支払いを勧告し、無事に回収できたケースが多数あったそうで、その中には最大手のサンタンデール銀行の頭取Emilio Botin氏の名前もあったとのこと。
Lista de Falsianiと呼ばれるこの脱税者リスト(海外に多額の銀行口座を持ち、それを申告しないことは犯罪)の公開を求める声が上がっているものの、現政府の財務大臣Cristobal Montoro氏は、現段階では公開しないとしています。
脱税とか汚職とかのニュースがかまびすしい一方で、このHerve FalcianiのことはTVEのニュースでほとんど取り上げられていないのですよねぇ。

さて、そのHerveさん、3日おきに最寄の裁判所へ出頭することが条件に、昨年12月17日(日)マドリッド近郊の拘置所から仮釈放され、現在マドリッドに住んでおられるとのこと。逮捕されて以来、拘留中も、仮釈放後も彼は全国管区裁判所のPablo Ruz判事が担当しているグルテル事件の捜査に協力しており、Lista de Falcianiの中には、Rafael Correaを始めとするグルテル事件の首謀者ら、それら首謀者の弁護人を務めた弁護士、捜査線上に名前の挙がっている民衆党(PP)幹部らなどの名前もあることが判明。同裁判所はスイス当局に対してこれら容疑者の口座に関する捜査を依頼したところ、銀行の守秘義務に抵触するという理由でこれを断ってきたのだとか。

そして現在、国税局の技術者チーム、汚職取締検察チームとHerveさんとが協力して、彼が盗み出したデータの入ったハードディスクの解読に当たっているのだそうですが、このデータが解読できれば、立件以来4年が過ぎて捜査が行き詰っていたグルテル事件も新たな局面を迎えることになるかも知れませんね。
Herveさんのスイス送還の可否を決める裁判は4月15日に予定されていますが、彼の弁護人は、彼がその所有する情報によってスペイン当局に大いに協力しているという点に訴えるようですが、果たしてどのような判決が出ることやら。


晴れ間を縫って、なが〜い散歩。
綺麗な花、何の樹だろう・・・

久々に訪れた公園

聖イシドロの祠とルーシー

綺麗なすみれ

黄色いすみれも綺麗

手入れされたスミレもいいけど・・・

野の花もとっても綺麗