ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

コリーナ・ラーセンにBBCが独占インタビュー(ここまで暴露していいものなのか・・・)

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百日紅とルーシー)

 


この一週間、スペインではコロナ第二波の勢いが止まりません。地域によってはロックダウンのフェーズ2やフェーズ1に逆戻りして、外出や移動を制限するところも出てきています。

そんな中、コロナ以外に注目を集めた出来事がいくつかありました。

前回アップした記事に書いたように、8月17日(月)に元国王ファン・カルロス1世の居所が公表され、同日にカジェタナ・アルバレス・デ・トレド氏の解任が発表されました。

そして、20日(木)、スペインを出て今はアブダビに居るファン・カルロス1世の愛人だったコリーナ・ラーセンに対して去る8月5日にBBCが行った独占インタビューを含むドキュメンタリー番組がイギリスでオンエアされました

スペインはもちろん、世界中のメディアがこのインタビュー内容をセンセーショナルに取り上げましたが、スペイン王室およびスペイン政府は一切ノーコメント。ゴシップ番組のコメンテーターらは大忙しだったけれど、TVE(スペイン国営放送)テレビのニュースなどはBBCで独占インタビューが放映されたと報じただけで、深堀する報道はなし。この日にTVEの公式ウェブサイトに入ると、最初にどーんと大きく表示されていたのは「Los Winsor」というイギリス王室を扱ったドキュメンタリー番組の宣伝。BBCがスペイン前国王の愛人だったコリーナ・ラーセのインタビューをオンエアしている日に、TVEのウェブサイトでイギリス王室のドキュメンタリー(ダイアナ妃の悲劇とその後)を提供している、たまたま?それとも何かの意図あり?

さて、このコリーナ・ラーセンのBBC独占インタビューですが、いくつもの?を感じます。

なぜ今だったのか?:ファン・カルロス1世がスペインを出ていて、その居場所がアラブ首長国連邦アブダビであることを本人の意思で公表した3日後。インタビューで彼女が暴露したことによって、ファン・カルロス1世に直接的不都合が起こらない状況になることを待っていたからか。また、9月7日にスペイン全国管区裁判所の判事に召喚されている彼女は、その前に自分の立場をこういう形で世間に印象づけておきたかったのか。

なぜBBCとのインタビューだったのか?:2018年7月に、彼女がダークなイメージの元警察官ビジャレホと話した会話の録音をリークしたのはセンセーショナルなゴシップ記事を扱うことで有名な(読者も多いが批判も多い)デジタルニュースウェブであるOK Diarioでした。これ以降、彼女にまとわりついてしまった、スペイン元国王を血迷わせた女というイメージを払しょくするために、ゴシップウェブではなく、世界的に報道のレベルが認知されているBBCというメディアで自分のイメージをクリーンなものにしておきたかったからなのか。

 

インタビューの内容を正確に知りたいと思い、BBCワールドのWebの記事を読んでみました。

これ:https://www.bbc.com/mundo/noticias-internacional-53841839

ここに記載されている彼女が話した内容を時系列で以下に要約してみました。

*2004年2月、狩猟イベントでファン・カルロス1世に初めて会った。彼の所持していた銃がうまく作動せず困っていたところ、銃砲に詳しい私が手助けしたことで知り合い、電話で頻繁に話すようになっる。同年夏に初めてデートし、政治、歴史、グルメ、ワインなど共通の話題や趣味が多く、一緒に楽しい時間を過ごすようになる。一年目はお互い忙しくて頻繁には合えなかったが、お互いにとって相手がとても大切な存在となって行き、ファン・カルロス1世から一日に10回以上も電話がかかってくることがあった。

ある日、私が国王に 「ソフィア王妃との関係はどうなっているのか?」 と尋ねたところ、「二人して一緒に国王と王妃の役割を果たすが、私生活は全く別々ということでお互い納得している。王妃とは別に、ここ20年来ずっと私生活を共にしてきた女性と最近別れたところだ。」 と彼は語った。これ以降、ファン・カルロス1世の私生活において自分は大切な存在となる。ファン・カルロス1世の友人らとも一緒に過ごすようになり、国王の子供たちとも知り合うようになる。

*2009年、私の父のところへファン・カルロス1世が訪ねて行き、「コリーナを愛している、彼女との結婚を考えている」 と伝えた。父からその話を聞き、嬉しかったけれども、現実として自分がファン・カルロス1世と結婚することはスペイン王室のことを考えれば非現実的だと思った。彼は自分が本気であることを父に伝えたかったのだと理解した。

膵臓癌末期の父と一緒にすごすためドイツに滞在していたが、父の葬儀の後にファン・カルロス1世としばらくぶりに会った時、「他にも3年前から付き合っている女性がいる」 と言われ、ショックを受けた。父の死に加えてこのファン・カルロス1世の言葉で自分は暫く立ち直れなかった。結婚を考えるほど自分との関係は真剣だと思っていたのに、ソフィア王妃とは別に、さらに他にも女性がいたということは、理解できないことだった。彼との関係にピリオドを打つと決めたが、国王は二人の子供をとてもかわいがってくれていたので、その後も友人として付き合って行くことにした。

2009年5月、ファン・カルロス1世は肺に腫瘍が見つかり、ショックを受けており、家族には未だ話していないが私にはそばにいて欲しいと言ってきた。憔悴した彼のそばに寄り添い、手術の前後も病院に寝泊まりして看病した。ソフィア王妃をはじめとする家族が病院に着くと、私はその間姿を見られないように外に出ているようにと、ぞんざいな形で命令された。

術後の長いリハビリの期間、頻繁にマドリッドに行き、ファン・カルロス1世の回復に寄り添った。

*2012年、ボツワナへのサファリツアーに3人で出かけたのは、ファン・カルロス1世から長男へのプレゼントだった。2004年~2009年までファン・カルロス1世とのロマンスが続いた期間、彼は二人の子供たちを非常にかわいがってくれた。2009年に破局を迎えた二人の関係をなんとか修復させたいと願ったファン・カルロス1世がサファリツアーに誘ったが、私はあまり乗り気ではなかった。

*2012年4月13日未明、サファリのテントでファン・カルロス1世が転倒、大腿骨骨折。転倒して大けがをしたファン・カルロス1世だったが、誰も何の行動も起こさない現実を目の当たりにして、本国送還の手配をしたのは私だった。プライベートジェットを手配し、医師団と共にファン・カルロス1世に付き添って飛行機に乗ったが、とにかく無事に彼がスペインへ帰りつくことを祈っていた。

*それまで秘密とされていた自分との関係がメディアに暴露された。問題視されたのは「ソフィア王妃に対する不実、スペインと国交のないボツワナという国にスペイン国王が秘密裏に出かけて象狩りという多くの人から批判される行為をしていたこと、スペイン国民が未曽有の経済危機に苦しむ中でサファリツアーにかかる膨大な費用がどこから支払われたのか不明なこと」などだった。

*国王が怪我をしていなかったとしても、ボツワナのサファリツアー参加の情報は事前に漏れていて、いずれにしても国王と私の関係とサファリツアー参加というスキャンダルがメディアに暴露される予定になっていたと感じた。クリスティーナ王女とその夫ウルダンガリン氏が被疑者として裁判が行われている状況の中、サファリのスキャンダルを暴露することで、ファン・カルロス1世の退位によって王室イメージ一掃を図ろうとする動きが王室内部で進行していた。善良な国王が私の影響で悪い道に踏み込んでしまったというイメージを作り出そうとする作為を感じた。

*ボツワナのサファリ以降、私はスペインの諜報機関、CNIに監視されるようになった。最初は、出張中にモナコの自宅に「スペインの友人」と名乗る何者か入り込み家宅捜索された。すぐに国王に連絡したところ、「パパラッチから君を守るため」との回答だった。自分の身に危険と感じたとすれば、古くからの友人であるモナコ大公アルベール2世にお願いするので、スペインCNIの介入は不要と伝えたが、侵入者が私の家で何を探していたのかは不明。

2番目は、ブラジルへ出張中に「モナコとニースの間には多くのトンネルがある」という送り主不明のメッセージが届き、スイスの別荘の居間に誰かがダイアナ妃の死に関する書籍を置いて行ったこと。これらは私に対する警告であり脅迫だと感じた。

その後、2012年にはロンドンの自宅にCNI長官自らが訪ねて来て、「国王の命で来た。メディアと接触するな。さもないとあなたと子供たちの安全は保障できない」と言われた。これは脅迫だと感じた。

*2012年にファン・カルロス1世から6500万ユーロがコリーナの口座に振り込まれたことに関して:金額が大きく、非常に驚いたが、万一ファン・カルロス1世が亡くなった場合、彼の家族は彼の意思を尊重しないだろうと以前から彼は言っており、私と子供たちに遺産を残すために、遺書を作るという話を2011年ころから彼がしていたので、訝しくは感じなかった。入金があったのは、モナコの自宅が捜索されたり、CNI長官がロンドンの自宅を訪ねたりした後だった。入金があった後すぐにマドリッドへ飛び、ファン・カルロス1世に会ってお礼を伝えたところ、私が脅迫などのプレッシャーを受けていたことを遺憾に感じていると言ってくれた。私は、このお金はファン・カルロス1世の私に対する愛情と闘病の苦しい時に寄り添ったことに対する感謝のしるしと受け取った、決して資金洗浄の方策などではない。

2014年、ファン・カルロス1世は私に対して関係修復を請うが、それはできないと返答した。彼は激怒して、このお金を返せと言ったけれども、これは怒りに任せて出てしまった言葉だと思っている。実際、ファン・カルロス1世はスイス検察の捜査に対して「お金を返すように言ったことはないし、コリーナが自分名義のお金を所有したこともない」と説明している。

*6500万ユーロという巨額のお金がファン・カルロス1世からコリーナに贈られたことに対して、スペイン国内でそのお金はスペイン国家に返すべきとする声が聞かれることに関して:それはスイス検察が決めること。40年に渡って行われてきた「ファミリービジネス」のやり方に突然ライトが当てられ、そのライトの中にいるのが私自身である。今、このビジネススタイルが問題視されるのであれば、私だけでなく、数百におよぶケースにも同じようにも光が当てられるべきだ。

*ファン・カルロス1世と恋愛関係にあったことは決して後悔していない。彼にはいつでも真摯な気持ちで向き合ってきた。こういう結末になってしまったことは非常に悲しい。

以上が、コリーナが話した内容の要約です。

 

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インタビュー内容を見終わって思うこと。

自分の立ち場を守るためとはいえ、ここまで赤裸々に暴露する必要があったのでしょうか?彼女の話す内容が真実かどうかは別として、スペイン元国王のここまでプライベートな部分を知りたい人がいるんでしょうか?

ファン・カルロス1世のイメージは壊滅的、現国王をはじめとする王室全体もほぼ不可逆的なダメージを受けたと思います。ファン・カルロス1世の正妻であるソフィア元王妃はいったいどんな思いでしょう。スペイン国民も、外国人である元愛人が外国メディアであるBBCに元国王のここまで詳細なスキャンダルを暴露したことに驚きだけではなく、ある種の憤りと悲しみを覚えているのではないでしょうか。

 

この記事を書いている今日、8月24日、エル・パイス紙に 「コリーナ・ラーセンが英国西部に所有する豪邸をスイス検察が捜査中。この館は、パナマの財団が1300万ユーロで購入したもの」 という記事が掲載されました。スイス検察とスペイン検察から捜査されているコリーナ・ラーセン、今後もまだまだ展開は予断を許さないことでしょう。

 

おしまい