ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

トンネルの光が見えないスペインにも春は訪れる。

今日は2013年3月8日
最後にブログをアップしてから、なんと5か月近くの時が過ぎてしまいました。
肩と腕の調子が悪く、キーボードやマウスを動かすことがままならず・・・というのは言い訳にならないですね。

去年の今頃は半年近く雨が降らなかったことで大地がひび割れるほどカラカラに乾き、草も木も死んでしまうのではないかと心配していましたが、アーモンドの花が咲き始めたころに恵みの雨が降り、全てが生き返ってほっとしたのを覚えています。今年は全く逆。11月12月も十分雨が降り(洪水被害をもたらしたところも多々あり)マドリッドは冬だというのに公園も丘も草が茂って青々としていました。このまま春が来るかと思いきや、2月末頃から凄い寒波がヨーロッパを襲い、スペインも北部や北西部を中心に豪雪や豪雨の被害に見舞われたところもありました。2月半ばに少しずつふくらみ始めていた木の芽や花のつぼみも2月末からの寒さにびっくり。ここに来てようやく寒さが緩み始め、少しずつ春が近づいて来ているのを感じます。いつもならマドリッドでは2月末に満開のアーモンドの花、今年はまだ5分咲きと言ったところでしょうか。

予算カットで去年は剪定されなかった街路樹が多くあり、大きく張った古い枝のまま立ち枯れたようになったものや新しい枝葉が思うように成長できない樹などが多く見られて痛々しかったのですが、今年は我が家の近くの街路樹たちにも剪定が入り、とても嬉しそう。これから元気な芽吹きを見せてくれることでしょう。
市の予算カットと言えば、昨年のクリスマス、我が家のある地域は前年まであったクリスマスイルミネーションが一切なくなりました。なければないで、結構さっぱりしていいもんですが、同じ予算カットでも街路樹たちの剪定作業を割愛されると、その後1年間ずっと樹たちが苦しむだけでなく、環境や景観にも影響が出てくるだけに考えて欲しいものです。

さてさて、ブログをご無沙汰していた5か月間でスペインはさらにズタボロになりました。現政府は財政赤字をゼロにするという大命題を免罪符のように振りかざし、そのための唯一の方法は支出削減であるという理論の元、国民に痛みを強いる厳しい経費削減政策を次々と打ち出してきました。
●職を失い、収入を断たれた家族が路頭に迷う。
多くの公共事業プロジェクトの中止や公的機関の合併や閉鎖によるリストラで失業者が増加。2012年2月、上院下院共に過半数を占めるPP民衆党が組閣する現政府、政令によって労働法の改訂。企業の雇用を促進し、特に若年層の雇用創出を目指して実施されたこの労働法改訂でしたが、結果として企業にとって解雇が容易になったため、手っ取り早いコスト削減手段として多くの企業がリストラを実施したことによって失業者がさらに増加。ついにその数が600万人を突破し、家族全員が失業中という家庭が180万世帯を超えたとか。昨年9月8日の当ブログ「最低限の生活と増税」で書いた事態は、この半年でさらに深刻化。雇用保険支給期間が終了して、収入が断たれた多くの家庭、予算カットにあえぐ中央政府地方自治体の行政による福祉政策はあてにならず、親兄弟や親戚、隣人などの支援、あるいは宗教団体を始めとするONGによる支援に頼ってしのぐ辛い毎日。特にこのような家庭の子供たちのことを思うと何もできない無力感と理不尽に対する怒りを禁じえません。条件を厳しくしたとはいえ政府がしぶしぶ支給を続けている生活補助金425ユーロ。最低限の生活を支えるには低すぎる数字ですが、もしこれさえもなくなってしまったら、略奪や窃盗や強盗などの犯罪に走らざるを得ない人も出てくるのではないかと思ってしまいます。自分一人ならホームレスに甘んじても、愛する子供たちのことを考えたら犯罪に手を染める人がいるかも。
●家を失う。
スペインの不動産バブルが膨らんだ時代にローンで住宅を購入し、バブル崩壊後の経済危機で仕事をなくし、収入がなくなる、ローンが払えなくなる、銀行による差し押さえ、強制立ち退き命令、家族と共に路頭に迷う。強制退去をスペイン語でDeshaucioと言いますが、2008年にバブル崩壊後、現在までにこの図式の経過をたどって強制退去となったケースは40万件と言われ、深刻な社会問題となっています。2012年秋頃からDeshaucioを苦に自殺した人が相次ぎ、法に基づいてこれら強制退去命令を出さねばならない立場にある裁判官から「住宅ローン契約の基になる現行の法律は1909年につくられたもので、現状に即さないものになっており、金融機関に有利でローン負債者に不利なものであることは否めないが、私たち判事は法に背く訳にはいかない。しかし、負債者が直面している惨い現実を生み出す判決をこれ以上下し続けることには納得できない。」として現行法の改正を求める報告書を司法の最高府であるCGPJ(司法総評議会)に提出。また自治州によっては州の判事らがDeshaucioの手続きを一時的に凍結すると宣言するケースも続出。そんな中、世論に押されて政府が出したDeshaucio執行法改正案は、「低所得者が対象となる強制退去を一時的に延期する」という付け焼刃的なもので、野党、司法界、国民のいずれからも支持を得ることができないものでした。
民主化後、スペインが築き上げてきたものが壊れ始める。
国民皆保険制度、公共医療システム(保険加入者もその家族も医療費負担は基本的にゼロ)、介護システム、教育システム・・・
経費削減という名のもとに、今まで不可侵領域とされ、先人たちの努力によって作り上げられてきたこれら公共サービスがじわじわと崩壊し始めているのを感じます。
詳しくは機会を見つけて書きたいと思いますが、本当に悲しくなります。そして怒りを禁じえません。
だからこそ、国民はこの怒りをデモという形で表しています。Marea Blanca, Marea Verdeなどなど。そして最近で最も大きなデモは23FのMarea Ciudadana(国民の潮流とでも訳しましょうか)。23Fと言えば、1981年2月23日に、スアレス首相辞任後に選ばれたカルボ・ソテロ首相の就任演説が行われようとする国会議事堂に治安警備隊が乱入し占拠、軍部の一部がこれに合流して起こしたクーデターでしたが、国王がこれを制し、軍部もそれに従って未遂に終わった事件でした。この日に合わせて国会議事堂前に集結した群衆は武器ではなく、平和的なデモ行動によって政府に対する抗議を示しました。

ラホイ首相を始めとする政府は財政赤字をゼロにできる唯一の方法は支出削減であると言い続けて国民に我慢と痛みを強いてきましたが、方法はいろいろあるはず。
財政難で政府のお金がない、行政の予算がないとおっしゃる。
銀行を潰してはならないということで、公金を投入して支えました。
大手金融機関を破たんに導いた経営幹部はその経営の失敗を責められることもなく、天文学的数字の報酬を持って退任。
職を失い、家を失い、路頭に迷う貧困層が急増している一方で、超高額所得者の数もその資産額も増える一方だとか。超高額所得者や企業の脱税が膨大なものになっているのに、それらを回収することができていない。財政赤字ゼロにするには、支出を減らすと同時に収入を増やすことにもっと力を入れるべきでは?と誰でも考えられるでしょう。
とまれ、社会の両極化が進む中、大多数の国民は痛みを強いられひいひい言いながら生きているそんなスペインで、次々と汚職事件が発覚。グルテル事件(疑わしきは罰せずでこのままケースクローズになるのではと危惧されていたこの一大汚職ネットワーク事件、ここに来て新しい局面が・・この詳細は後日)、パルマ・アレナ事件(国王次女の婿ウルダンガリン氏が脱税、汚職容疑で起訴されているこの事件、捜査が進むにつれて、ウルダンガリン氏と、この事件の軸となるNOOSという組織を共同経営していたディエゴ・トーレス氏がお互いに罪をなすりつけ合うというドロドロな局面に突入、王女様やら王室顧問やらまで巻き込んで大変な事態に。この詳細も機会があれば後日)、そして極め付けが政府与党のPP民衆党の元会計責任者バルセナス氏の隠し口座発覚(1月15日エル・パイス紙、最初2200万ユーロと言われたが後で3000万ユーロと解る)、そして1月30日にはそのバルセナス氏による手書きの裏帳簿がエル・パイス紙で公表される。その裏帳簿には過去20年間に建設会社などからの献金(法に触れるものも含まれる)の記録やら、党幹部が正規の給料の他に、封筒入りの現金を受け取っていた記録が記載されており、帳簿全てが白日の下へ。当のバルセナス氏は自分の筆跡じゃないと白を切るも、裁判所の命じた筆跡鑑定で本人のものと判定され、この汚職疑惑事件が立件され、ついに裁判所での捜査が始まりました。民衆党はバルセナス氏を切り捨てようにも、数知れない弱みを握られていてなす術なしといったところ。裏帳簿に記されていた裏金は首相を始めとする現政府の首脳陣を始め、歴代の大臣らの名前もあり。財政赤字をゼロにするという大命題を突き付けて国民に痛みを強いる厳しい経費削減政策を打ち出してきた現政府。国民が職を失い、家を失い、路頭に迷っているその一方で、閣僚たちが多額の裏金ポケットマネーを得ていたことを知らされた日には、もうやってられません! 
エル・パイス紙に公表された裏帳簿を企業による不正献金という切り口から検察特捜部(スペインではFiscal Anticorrupcionという検察)の指揮の元とUDEF[Unidad de Delincuencia Economica y Financiera]という警察組織が捜査していたところ、今日3月7日にグルテル事件を担当する全国管区裁判所のパブロ・ルス判事によって、「献金を行っていた企業とその内容がグルテル事件と大いに一致する」という判断から、このバルセナス氏の手書きによる裏帳簿に関する捜査をグルテル事件の一部として行うことが決定され、検察特捜部による捜査打ち切りが命じられました。グルテル事件はその膨大な汚職網と捜査上に上がってくる人物の中に中央政府や州政府、地方自治体の現役政治家が多く存在することから、捜査は非常に困難であると同時に、すさまじい政治的圧力があちこちからかかっているため、「疑わしきは罰せず」とされる可能性が危惧されていましたが、パブロ・ルス判事はこのバルセナス事件も含め、きっちりとその真相を究明してくれるのでしょうか。立件から既に長い時間が過ぎたグルテル事件、現在までに唯一判決を下されたがこの事件の捜査を開始した判事だったバルタサール・ガルソン氏だという事実(当ブログの2012年2月12日の記事参照ください)を見ると、スペインの司法にたいしてあまり期待できない気もしてきますが・・・・

5か月ぶりの書き込み、書き始めたらついつい長くなってしまいました。
これから、また、徐々に書いて行きたいと思うのですが・・実践できるといいなぁ。

先週、マドリッド市西部にあるQuinta de los Molinosという公園に行ってきました。ここはアーモンドの樹がたくさんあり、満開時には花咲爺さんの世界になりますが、残念ながら寒波のせいで未だ5分咲きでした。



春はもうすぐそこに・・・・


丘の上
 
丘の上のルーシー

公園のルーシー

塀を超えて枝を伸ばすアーモンド
何の樹?

ボケ?

空き地に咲くアーモンド
剪定を受けて嬉しそうな樹
春を待つ

今日は朝から雲に覆われ雨が降り続いた暗い一日でしたが、日暮れ時、雲が切れて西の空が夕焼けに染まり感動的でした。

うっす!

チーズを見ると二足歩行するルーシー

ハウスのルーシー(何か不満でも?)

花とルーシー、えっ?