ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

セマナ・サンタ

今日は3月25日、朝からどんよりした一日、空は黒く厚い雲に覆われ、雨が降ったりやんだり、そして先週の温かさがうそのように肌寒い。


昨日、24日(日)の棕櫚の主日(Domingo de Ramos)から31日(日)の復活祭(Domingo de Resurreccion)までの一週間が聖週間、スペイン語ではSemana Santa。


聖週間とは何ぞやというテーマに関しては、WikipediaWeblioでご覧いただけば非常に詳しく説明されているので、宗教的知識の無い私が説明するまでもありません。


スペインに来て間もない頃、Pasion de Cristoという表現を見聞きし、「キリストの情熱」って何だ?思ったものでしたが、大文字のPで始まるPasionは受難を意味するのだと聞かされても、キリスト教も聖書もよく知らない自分はやはり何でだ?とちんぷんかんぷんでしたっけ。


まぁ、スペインだけでなくヨーロッパの多くの国の歴史や文化はキリスト教の上に成り立っていることを考えれば、聖週間がとても重要な意味を持つのはうなづけるものの、その意味するところを想うと個人的にどうも好きになれないのが本音です。


ユダヤ教の主流をなす教えと真っ向から対立するようなあまりにも寛容な考え方で支持を集めたイエスを危険思想の持ち主として警戒したユダヤ人司祭や政治家らは、彼を有罪にするため様々なプロパガンダを講じた。

使徒のひとりであるユダを抱き込んで、オリーブ山ゲッセネマの園でイエスを逮捕すると、まずはユダヤ王の所へ行って、イエスは自分を「神の子でありユダヤ人の王」と称しているのでこれは明らかに謀反だ、と彼を訴えたが、ローマ帝国の支配の元、実際にはなんの力もない王様、面倒に関わりたくないものだから「僕に聞かないでよ、ローマ総督のピラトさんに言ってちょうだい」と来た。

そこでユダヤ人司祭らは総督の所へ行き同じように訴えたが、ピラトは「イエスは謀反人には見えないよ、ただ頭がおかしいだけなんじゃないの」とつれないお言葉。でもユダヤ人らは後に引かず様々な手段でピラトにプレッシャーをかけてくる。ローマ総督だからローマ法を適用する(ローマ法だと大罪にはならない)と主張するも、ユダヤ司祭らは反逆者は死刑にしなければならないと言い張る。

これに困ったピラトさん、おりしもユダヤ教最大の祭り「過ぎ越しの祭り」の真っ最中、一旦はイエスを有罪にして、この祭りの恩赦で釈放すればよかろうと苦肉の策を思いついた。群衆の前で極悪強盗犯バラバとイエスのどちらに恩赦を与えるかとピラトが問うと、ピラトの意に反し、ユダヤの群衆は強盗犯バラバを釈放し、イエスを十字架にかけろと叫ぶ。

ピラト自身はイエスの死刑には反対だったものの群集の暴動を恐れてイエスを群衆に引き渡し、自分は血の付いた手を洗い流しながら「この血について私には責任はない」と宣言したと言われている。
スペイン語でLavarse las manos(手を洗う)という表現は「知らないふりをする、あるいは関係ないと主張する」というような意味の慣用表現として使われていますが、これはこのピラトさんの行為が根底にあるものだと思います。

毎年、Semana Santaには必ずPasion del Cristo(キリストの受難)を扱った映画がテレビのいろんなチャンネル放映されます。最後の晩餐、ゲッセネマの祈り、ユダの裏切り、イエスの逮捕、裁判、残りの使徒たちの裏切り、有罪判決、そして十字架を背負わされたイエスゴルゴダの丘まで頭にいばらの冠を頂き、鞭打たれながら歩き続ける。磔刑が行われた金曜日。そして三日後日曜日にイエスが復活。

Semana Santaに行われるプロセシオンはイエスキリストの受難をビジュアル化したイベント。受難の様々な場面のイエスをかたどった像を山車にして信者たちがそれを担いで街中を練り歩くのですが、Cofradiaと呼ばれる信者が組織する会がそれぞれに様々なイエス像を頂いた山車を担いで繰り出します。
スペイン中の多くの町や村でこのプロセシオンが行われますが、中でも有名なのがサモラとセビリアでしょう。スペイン南部アンダルシアでは、イエスの受難劇に聖母信仰が加わり、キリスト像だけでなく、キリストの死を嘆く聖母の像を頂く山車もたくさん出ます。

痛みと苦しみの象徴である受難劇、息子の死を嘆き悲しむ聖母マリア。多くの信者が肩に担いで練り歩くマリア像は豪華絢爛な衣装をまとい夥しい花に彩られて怪しい美しさを放ち、血まみれになり苦痛に悶える表情をたたえたイエス像もまた不思議な美しさに満ちています。
どうしても血なまぐさくてドロドロした感じをぬぐえないのは、自分がキリスト教徒ではないからなのでしょうか。やっぱり生理的になじめないSemana Santaなのです。



セビリア市役所がアップしている今年のSemana Santa用動画:
https://www.youtube.com/watch?v=W-lkabReboI&feature=youtube_gdata_player


観光客の方がUPしたらしいほぼリアルタイムのマドリッド市のプロセシオン(マヨール広場で撮影されたものようです)
http://www.youtube.com/watch?v=8V76O-wtG-w


サモラ市のプロセシオンのひとつ、Procesion de la Buena Muerteの動画。
http://www.youtube.com/watch?v=cGo_xkKHI1o


Ecijaという町で今年のSemana Santaに撮られたというこんな動画がありました。
ちびっこの頃から、まずは形からってことでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=s3irY4gQtvM