ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

クリスティーナ王女、起訴される

どこの国でも、政治家に汚職は付き物。でも今のスペインほど国民が政治家の腐敗ぶりにうんざりしている国はないんじゃないだろうか。立件されているものおよび疑いがもたれているもの、ざっと考えても次のものは誰でも知っているでしょう。

1.Caso Gurtel(汚職一大ネットワーク、民主党、民衆党が与党の多数の自治体政府、最近はAna Mato厚生大臣とその元夫であり元民衆党幹部、元ポスエロ市長,Jesus Sepulveda氏に関連するあらたな汚職疑惑、Rita Berbera氏の新たな汚職疑惑、全国管区裁判所のRuz判事担当)

2.Caso Papel de Barcenas(脱税、民衆党裏帳簿)>1と2を同事件として扱うかどうかで、Ruz判事とGomez Bermudez判事の間で見解の相違。

3.Caso ERE(アンダルシア州政府、社会党、労組、ブローカー、Sevilla地方裁判所Alaya判事担当)

4.Caso Noos(Diego Torres , Urdangarin、Palma de Mallorca地方裁判所Castro判事担当)
5.Caso Pujol(Ciu)

6.Caso Jaume Matas

7.Narco y Feijoo

8.Herencia de Duan Juan de Borbon(Cuenta secreta en Suiza)



ところで、今日、4月3日、スペインのメディアのトップ見出しはいずれも「クリスティーナ王女、ノオス事件で起訴される」というもの。
現国王の次女が裁判において公金横領の容疑で起訴された、という事実。いろんな意味で波紋を呼んでいます。

国王の娘婿が被告の一人というこの非常に重い裁判を、全国管区裁判所も「いやぁ、勘弁してくださいよ」と言って断ったこの非常にシンドイ裁判を、一地方の裁判所、それもバレアレス諸島地方裁判所の一判事が担当しているのです。様々な政治的圧力やらプレッシャーやらが凄いはず。そのCastro判事が今日、王女の起訴に踏み切った、いやぁ、これは歴史的な出来事と言えるかも。

これからいろんなリアクションが起こることでしょう。
まず、検察が側、この判事の起訴に対してこれを不服として控訴を表明。
司法総評議会でもなんらかの動きがあるのじゃないかなぁ。
Castro判事の身の安全(物理的な意味も職業的な意味も両方)を願うのは私だけでしょうか。


長くなりますが、この事件Caso Noosをまとめてみました。

Caso Noos(ノオス事件

立件2010年7月22日
Palma Arena事件の捜査を担当していたPalma de Mallorca地方裁判所のJose Castro判事によって、同裁判から派生した別件としてCaso Noosの名称で立件された。
主な被疑者はInstituto Noosの共同運営者Diego Torres氏とIñaki Urdangarin氏、起訴理由は、両氏によって設立、運営された非営利財団Instituto Noosおよびその関連組織を通じて行われたとされる横領、脱税、背任、虚偽、資金洗浄などの容疑。

●原告:
汚職取締検察(Fiscalia Anticorrupcion)バレアレス自治州担当の検察官Pedro Horrache Arrom氏。捜査はPalma de Mallorca地方裁判所Castro判事の指揮下、汚職取締特別検察(Fiscalia Anticorrupcion)と司法警察(Policia Judicial)が担当。

2012年10月には極右政治団体Manos Limpiosが民間団体として原告に加わる。

2013年1月から国家弁護人局(Abogacia del Estado)が被疑者らが47万ユーロに上る脱税をしているとして国税局の名の下に提訴。


●被告:
★Diego Torres:2011年6月に起訴される。
大学にて経営学を専攻後、ESADEビジネススクールにてMBAと経営科学博士号取得、同スクールにて経営政治学の教授を務める。ESADEに入学したUrdangarin氏と師弟関係となり、親交を深め、その後一緒にInstituto Noosを運営。

★Iñaki Urdangarin :2011年11月に起訴される。
現国王の次女クリスティーナ王女の婿。元ハンドボール選手、アトランタ・オリンピックではスペイン代表として活躍。現役引退後、ESADEにて経営学を学び、そこでDiego Torres氏と知り合う。クリスティーナ王女の伴侶としてパルマ・デ・マリョルカ侯爵の称号を与えられていたが、この汚職事件に起訴されて以来、公共の場に王室の一員として出ることを控える様に国王から指示されている。また、Palma de Mallorca市で同侯爵の名を冠していた通りの名前が民意によって別の名に変更された。
 
★Jaume Matas:立件当初から起訴。
バレアレス自治州の元知事、在任中にスポーツと観光に関するフォーラムを2回開催、いずれもInstituto Noosにその組織・運営を委託。フォーラムの規模と期間に不相応な230万ユーロが支払われた。

Ana Maria Tejeiro:2011年12月に起訴される。
Diego Torres氏の妻、Instituto Noos運営における司法・会計分野を担当していた。

★Infanta Cristina:2013年4月3日に起訴される。現国王の次女。



●経過:

2006年2006年バレアレス自治州議会の社会党議員Antoni Deguezが、2005年11月3日間にわたって開催されたスポーツと観光に関するフォーラムはほとんど注目を集めるものではなかったにも拘わらず、その組織運営を委託された外部団体であるInstituto Noosに対して120万ユーロが支払われた事実を非難したが、具体的措置が取られず、Instituto Noosはその活動を継続。

2009年になって、Caso Palma Arena事件によってInstituto Noosの存在とその活動が再浮上。


2010年
7月22日、Caso Noosとして立件、Palma de Mallorca地方裁判所のJose Castro判事が、バレアレス自治州の観光事業担当機関とInstituto Noos(契約締結当時の理事長はUrdangarin氏)の間に2005年および2006年に交わされた契約に関する情報の提出を要請。

エル・パイス紙によって、Urdangarin氏が理事長だった2004年から2006年にかけてInstituto Noosが複数の自治州政府や地方自治体政府に対して国際的な文化スポーツイベントの組織運営を提供する活動が行われ、非営利財団であるInstituto Noosに対して様々な行政組織の予算(国民の税金から)から合計580万ユーロにのぼる額が支払われたことを示唆する書類が掲載される。なお、これらの契約ではイベントが招致運動だけに終わり実際に開催されなかった場合にも膨大な報酬がInstituto Noosに支払われていたことが発覚。

Castro判事および汚職取締検察(Fiscal Anticorrupcion)はこれらの契約を違法と判断、なぜならInstituto Noosに委託する必然性が存在しないだけでなく、地方公共団体がこれらイベントの企画・組織・運営を委託するにあたり、一般競争入札が一切行われていないため。

捜査によって、Instituto Noosは多数のペーパーカンパニーを所有し、そこから同財団に請求書を発行、そしてそのカンパニーにまた別のペーパーカンパニーから請求書を発行という形を連鎖させることによって、自治州政府や地方自治体政府から支払われた膨大な額のお金が最終的にどこへ消えたのか解らなくなるという仕組み。
何しろ、経営学修士や経営科学博士の学歴と知識、そして「スペイン国王の娘婿」という凄まじい肩書とコネを持つお二人です。

Torres氏とUrdangarin氏のいずれもが居住するカタルーニャ州の州税局は、2007年度に両者が関与する法人が不正行為によって行った脱税の額が23万ユーロに上るとしている。


2011年
6月2日Castro判事がInstituto Noosの副理事だったDiego Torres氏を起訴

7月11日Torres氏が出廷、Insitituto Noosがバレアレス州政府と交わした契約が合法であることを主張。

11月8日、汚職取締検察バレアレス州担当Pedro Horrache検察官が、バレアレス州内に存在するInstituto Noosの関連会社(ペーパーカンパニー)およびTorres氏の住居に立ち入り捜査。

同日、司法警察バレンシア自治州政府本部および芸術科学都市管理機関に立ち入り捜査し、Instituto Nousとの契約書類を押収。

Castro判事は秘密捜査を公開捜査に切り替え、Noos活動を通じての脱税、背任、文書偽造、公金横領などの容疑で12月29日にUrdangarin氏を起訴

2012年1月2日に判事が公表した捜査記録で、UrdangarinおよびTorresの両氏が受け取った額は580万ユーロに上り、この数字はバレンシア州政府(352万ユーロ)およびバレアレス州政府(228万ユーロ)から支払われた額と一致することが明らかになった。

(金額) 支払われた組織>最終的な受け取り人
2.794.444 Noos Consultoria Estraegica >Urdangarin
 397.996 De Goes Center > Stakeholder Management >Urdangarin
 787.900 Aizoon > Urdangarin 
 749.500 Virgual Strageties >Torres 
 456.380 Shiriaimasu > Torres
 853.100 Intuit Strategy Innovat >Torres


2012年
事件の広域性と重要性から裁判を全国管区裁判所(Audiencia Nacional)へ委譲することが検討されたが、同裁判所での担当となるはずのIsmael Moreno判事が、当時Urdangarin氏のInstituto Noosにおける活動内容の捜査が行われていた本件を引き継ぐことを拒否。従って、本件は引き続き、Palma de Mallorca地方裁判所第三法廷のJose Castro判事が担当することとなる。

Diego Torres氏の妻、Ana Maria Tejeirode氏が起訴されるが、彼女は「法廷で陳述しない権利」に訴えた。

2月初め、妻の弟で、Noosの秘書であると同時にNoosの複数の関連会社の会計を担当していたMiguel Tejeiroが出廷して証言。

2月18日、バレアレス州政府の元スポーツ局長、Jose Luis Ballester氏が出廷し、元州政府知事のMatas氏とUrdangarin氏の間で契約が交わされたことを認める。同時にクリスティーナ王女はこの契約提携に無関係であるとも証言。

2月24日と25日の2日間、Urdangarin氏が出廷、すべては元共同経営者のDiego Torres氏が行ったことであり、自分は全くの無実であると主張。また、クリスティーナ王女は全く無関係であるとも主張。
なお、Urdangarin氏は証言の中で、2006年ごろ国王からInstituto Noosから手を引くよう言われたが、2008年に活動を再開したことを認める。また、検察側が、Urdangarin氏がスイスに銀行口座を持っていることを暴露し、同氏がこれを認める。

12月19日、汚職取締検察は、Torres氏とUrdangarin氏の両氏に対して、InstitutoNoosの活動を通じて行った公金横領の犯罪の保釈金として合計819万ユーロを要求。


2013年
1月、国家弁護人局(Abogacia del Estado)が被疑者ら2名が47万ユーロに上る脱税をしているとして国税局の名の下に提訴。理由は大きく二つ、ひとつはUrdangarin氏個人の2007年から2008年度の所得の虚偽申告、もうひとつは非営利組織であるInstituto Noosの法人税における虚偽申告。

2月16日、Diego Torres氏が出廷。
2006年に国王の勧告でUrdangarin氏がInstituto Noosを退任したというのはうそ、クリスティーナ王女も同意の上で外見上退任したように振る舞うという合意をしただけで、実際は活動を継続していた、と証言。
また、王女および王室秘書も本件に関連していることを示唆する証言。
それらを証明する多数の書類、特に電子メールを証拠として提出。
判事からの質問に対し「クリスティーナ王女はNoosの活動に理事として参加していたが、報酬をNoosから直接受け取ったことはない」と証言。

Torres氏が提出した電子メールが審理の証拠として受け入れられたことがメディアに漏洩。Urdangarin氏と弁護団はこれを不服として電子メールの無効を請願。

2月23日、Urdangarin氏が出廷、自分はNoosの活動の内容を大部分に関して知らされていなかった、またクリスティーナ王女は全く無関係である、と引き続き主張。

2月27日、検察側は、Torres氏によって提出された電子メールには王室およびクリスティーナ王女に対する容疑を立証できるものではないと判断したことが、メディアに漏洩。

4月、Torres氏は、王女のNoosへの関与および国王がその実態を知っていたことを証明するため、さらなる電子メールを証拠として提出。
これを受けて、Urdangarin側はこれらの電子メールを証拠として受け付けないように請願。

4月3日、Castro判事、クリスティーナ王女を公金横領の容疑で起訴。
これに対し、汚職取締特別検察は判事が行った王女の起訴を不適当とし、これに対して控訴すると発表。捜査を担当する予審判事の見解と検察の見解が対立。


と、今日までの歴史です。

スペインでは、国王の娘さんは嫁いでもその王位継承権はそのままなので、その7番目に位置するクリスティーナ王女が裁判で、公金横領で起訴されるということは、実に凄いことなのだと思いますが、私にとって最も驚くべきは、一地方裁判所の判事がこの決定に踏み切ったというそのこと。
これからこの判事に何が起こるか、目が離せないかも。




久々に丘の上の公園へ。
雨の後、空気が綺麗なので、マドリッドの街が綺麗に見えます。

お天気よくてよかったねルーシー。