ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

只今、内閣不信任案を国会で審議中。

 

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テレビをつけても、ネットを見ても、今日はどこも国会中継ばかり。極右政党のVOXがPSOE(社会労働党)とUnidos Podemosから成る革新系連立政権に対し、内閣不信任案を提出、下院(Congreso de los diputados)にて審議が行われているからです。

内閣不信任案は下院350議席の絶対過半数の賛成を得なければ可決されません。

現在の下院議席数の内訳は、PSOE(社会労働党)が120、PP(民衆党)が88、VOXが52、Unidos Podemosが35、Ciudadanosが10、その他の政党は上の図の通り。

VOXはその源がファランヘ党へ行きつく部分もあり、フランコ時代からの既得権益と結びついている部分もある極右政党ですが、ここ最近、国民の間に蓄積した不満を逆手にとってポピュリズムで一気に支持層を拡大し、昨年11月の総選挙ではPSOE、PPに次ぐ第3の政党となりました。民衆党が、汚職にまみれた幹部を刷新し、軸足を中道から右へ移したことを受け、その支持層がさらに右のVOXと中道に近いCiudadanosとに流れたことで、総選挙後の国会における政党勢力地図が大きく描き換えられました。

 

>この辺の経緯は過去の2つの記事でも説明しました:

元国王が姿を消した背景にあるスペインの政局

アルバレス・デ・トレドの解任

 

この内閣不信任案が可決されないことは、誰もが分かっています。

既得権層に支持されているVOXは、どんな手段を使ってでもUnidos Podemos(共産党系も含む)革新系連立政権を排除したい、それがだめでもできる限り疲弊させたいと頑張っている政党なので、不信任案が可決されなくても、とにかく、国会で現役政府に揺さぶりをかけることが目的なのでしょう。保守系のPPやCiudadanosに対して不信任案への賛成を呼びかけましたが、民主主義を逸脱した言動と行動を取っているVOXと一線を画してきたCiudadanosは全く興味を示しません。実質的にはVOXとほぼ同じような主張で現政権を攻撃し続けて来たPPはずっと態度を明らかにしてこなかったのですが、土壇場に来て、自分たちはVOXとは違うということを強調し始めています。

VOXのアバスカル党首の内閣不信任を訴える演説を聞いていると、「言霊」の怖ろしさを感じます。根拠となる明らかなデータのない(あるいは明らかにファイクであるデータに基づいた)糾弾のオンパレード。こうして、国会と言う場で激しい言葉を発して攻撃することで、国民の気持ちにはどんどんその言霊が入り込み、話し合いで歩み寄るという民主主義に代わって、お互いに罵り合い、糾弾しあうという対立が育っている気がします。

この内閣不信任案の審議のために、国会は丸二日間、他の法案の審議をストップしています。コロナ感染拡大が止まらず、全国的な感染拡大抑止策の検討が火急の課題である時期にも拘わらず、です。

 

国営放送ニュースの見出しが的を得ています。

Crispación política, desafección ciudadana y crisis del Poder Judicial: tres "virus" que perjudican la salud democrática

スペインを蝕む3つのウイルス:常軌を逸した政党間の権力争い、それに愛想をつかす国民、そして司法への信頼の失墜。

 

おしまい