ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

物思う秋・・・・メディアとは・・報道とは・・・

目の前にあるテレビから流れるニュース。
繰り返し同じ内容のニュースが異なるキャスターの口で語られる・・
何気なく見聞きしていると、ニュース・イコール現実という錯覚を起こしてしまいそう。ニュースが真実を伝える、そんな時代が果たしてあったのでしょうか。


2014年9月半ば、政府の経費削減政策に納得できず辞任したRTVE(スペイン国営放送)会長Leopoldo Gonzalez-Echenique氏の後任として与党民衆党が推薦していたJose Antonio Sanche Dominguez氏の任命可否に関する議決が、10月15日に公開投票にて下院で行われたが、全議席の2/3に達する賛成票を得られず可決されなかった。1週間後の10月22日に再度投票が行われたが、この日は投票用紙に書き込んで提出する形、つまり秘密投票が行われ、結果は賛成票が2/3に達し、同氏の任命が可決された。下院は350議席中、与党民衆党議席は185。公開投票では賛成票を入れなかったが、一週間後の秘密投票では賛成票を投じた野党議員が多数いたということですよね。これって、どういう風に考えればいいんでしょう・・・


民衆党が推薦したJose Antonio Sanchez Dominguez氏は、ABCやLa Razonなどスペインの保守系全国紙で活動してきたジャーナリストで、かつて第二期アスナル政権下で一度RTVE会長を務めた(2002-2004)経験があるが、当時、国営放送でありながら政府与党に有利な情報操作や偏向報道が行われているとして野党から辞任を求める声が挙がり、2004年の総選挙で社会党政権に変わると同時に解任された経緯がある。2011年にはマドリッド自治州のテレビ局Telemadridの会長に就任、それ以前から州政府与党の民衆党、および自治州政府首相エスペランサ・アギーレ氏個人のプロパガンダ局的性格を帯びていたTelemadridがさらにその色を濃くしていった時代でした。


2012年6月スペイン政府は、与党が上院下院共に絶対過半数を有する国会にて、政令によってRTVE会長を任命できるように法律を変え、さっそく政令によってDirector de RTVEにLeopoldo Gongzlez-Echenique氏を任命、同氏は就任早々、それまでの幹部人事を一挙に刷新。7月には、報道局長(Director Informativo)としてそれまでTelemadridの報道局長だったJulio Samoano氏を起用。Samoano氏は着任早々、報道部の人事を刷新、報道番組の編成や内容、キャスター陣容を大幅に変革。このようにTVE大改革が実施された次第でした。
現在のTVE(スペイン国営放送)もTelemadrid(マドリッド自治州テレビ)も報道の公平性という点では?????がいっぱい付きます。何が報道され何が報道されていないか、どのように報道されているか、そんな風に自問しながら緊張してニュースを見ていないと、知らず知らずの内に、本当の「現実」を見失いそうで恐ろしい。


そして、今、2014年10月23日にRTVE会長にJose Antonio Sanchez Dominguez氏が任命され、その1週間後、TVE報道局長Julio Samoano氏が解任され、後任としてにJose Antonio Alvarez Gundin氏が起用された。Gundin氏はTVEを始め複数の時事討論番組の常連コメンテーターで露出度はかなり高い。かつて、TVEの朝の報道番組には保守・中道・革新それぞれの視点を反映するコメンテーターが出演して意見を戦わせていたけれども、2012年のTVE大改革以来、同じ保守派の中で毛色の違うコメンテーターたちがテーブルを囲んでしゃべっているような、とても残念な内容に成り下がってしまっている気がします。そんな中にあってGundin氏は最も右寄り、ほとんど政府の擁護を目的としているかと錯覚してしまいそうなLa Razon紙の論説委員長でした。これから、国営放送の報道番組は、政府にとってさらに心地よいものになっていくことでしょう。
Carmen Caforel氏がRTVE会長、Fran Llorente氏が報道局長だった時代(2004年〜2012年)TVEが世界的な評価を受け、報道番組が様々な賞を受賞していた時代が懐かしいです。


中立報道を安心して視聴できたCNN+が2010年に財政難で閉鎖。多数ある民放局の株主はそのほとんどがベルルスコーニ氏のMediasetを始めとするネオコンネオリベラルな大手投資企業である今日、特定の興味による偏向のない報道は望むのが無理、そして本来中立であるべき国営テレビTVEは2012年から保守的、体制的な色を強め、いろんな局の報道番組のコメンテーターたちもほとんどが保守派。心していないと、コメンテーターが繰り返す発言がいつの間にか視聴する者の頭に刷り込まれてしまう。



メディアが巨大金融企業によってコントロールされているのは、テレビに限ったことではありません。スペイン民主化の牽引に貢献し、世論にに大きな影響を与えてきた全国紙でスペインで最も多くの人が読んでいるとされるEl Pais紙でさえも、財政難の末に存続の危機にあった昨年末、その株の57%をアメリカのLiberty Acquisition HoldingsというSPAC(特別買収目的会社)のひとつが獲得し、現在は大手金融組織に牛耳られいる次第。今年春頃から、同紙を読んでいて、なぜか今までにない違和感を感じる、というか別の新聞を読んでいるような感じに囚われることが多々有り、なんでだろう・・・と思っていたら、株主が変わり、編集長が変わっていたのね。



ぽか〜ん、という感じ、こんな顔はかわいいのに・・・

時々見せる、かわいくない態度。責任はこんな子に育てたバカ親にあるんです。