ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

残暑のころ (山火事と増税と予算カットと・・)

ようやくオリンピックが終わり、ほっとした感じです。
スペインも今年は予想外にたくさんの金メダルを獲得して盛り上がっていました。日本はメダル数では史上最高、金メダルの数は予想の半分くらいだったとか。オリンピックでは結構いろんな競技で日本と韓国が対戦していたようですが、スポーツって普段別にナショナリストでなくてもやっぱ自分の国を応援してしまいますが、その気持ちを政治的に利用されるとほんと嫌ですよね。

尖閣諸島竹島国後島とここ最近なんかきな臭いですね。
「2012年は世界が動き出す年」と言われていましたが、習近平に替わる中国、大統領選を迎える韓国、プチンがなんとか大統領に返り咲いたロシア、反日感情を煽ると国内の人気が上がるという図式なのでしょうが、ここスペインでのメディアの扱いを見ていても、ここ数年本当に顕著です、日本の国力が落ちているというか、日本の世界に対する国際的地位が、というべきでしょう。数か月おきに首相がころころ変わり、政治とか政策の一貫性も方向性もない日本の政府と真剣に向き合おうと思う外国元首がいないのは当然の結果だと思います。
李明博大統領の言葉は、世界中の国家元首が思っていても声に出して言わないことを敢えてこの時期に言ったものなのでは。3.11地震の後、日本人って凄い!って、世界中の人たちが驚嘆し、感動ました。ほんとに、礼儀正しくて、我慢強くて、責任感のある日本人は素晴らしと思います。なのに、なんで日本という国を背負うべき人たちはあんなにだらしないのでしょう。目先の自分たちの利益だけで派閥闘争に明け暮れ、国民のことなど全く考えない。そんな人たちによって治められている日本という国が、世界の流れから取り残されようとしている様を見るのが、本当に悲しいです。

スペインはここ2週間ほど、アフリカ大陸から張り出してくる熱風を含む高気圧にすっぽるくるまれ、記録的な暑さ(というより熱さという感じ)が続きましたが、先週末から少し気温が下がり始めました。
この暑さと降雨量の少なさも手伝って、今年は山火事が多発、既に130.000ヘクタール以上が焼けたとか。カナリア諸島のゴメラ島は世界遺産にも指定されているガラホナイ国立公園があるのですが、そこで山火事が起こり、2週間経つ今も、既に島の11%が焼けてしまっているのにまだ鎮火できない状況です。各地で発生しているおびただしい数の山火事、その95%が放火によるものだそうです。誰が何のために?と思わずにはいられません。

スペインのカラカラに乾いた大地とそこに踏ん張っているカラカラの樹木たちも、嫌いじゃありませんが、日本の滴るような緑、ほんとうに美しいですよね。
毎年、日本の実家に帰るのが夏、日中はアブラ蝉の声が響き、夕方になれば日暮しが歌う田舎の夏。日本一の豪雪地帯で一年の半分は雪に埋もれている精で、植物も樹木も短い夏を命の限り生きようとするからでしょうか、すべての風景が、朝も、昼も、日暮れも、故郷の風景は本当に涙が出るくらい綺麗ですよ。冬はこの同じ景色が水墨画のような世界に変わってしまうことを知っているからなおさらそう感じるのかもしれませんが。

付加価値税源泉徴収税の増税
スペインのテレビでは、来る日も来る日も、株式市場から実況中継するアナウンサーがスペイン国債のリスクプライムが何ベーシスポイント上がったとか下がったと、相変わらずしかめつらしい顔をしてしゃべっています。
スペインの金融機関には、「おかげさま」でEUの支援金が投入されるようで、暴落していた銀行やら信用金庫やらの株価が持ち直しているようで、投資家には「おめでたい」限りでしょう。EUがスペインの銀行に貸してくれるお金はスペイン国家が保証人となった訳で、そのつけは「EUからスペイン国家財政政策へのさらなるプレッシャー」という形で国民に回って来ます。9月1日から源泉徴収税は15%から20%になります。IVA(付加価値税:日本の消費税と同等)は物によって異なりますが、3つのカテゴリのうち、一般税率(Aとします)は18%から21%へ3%UP、減税対象品目(Bとします)は8%から10%へ2%UP、そして特別減税対象品目は4%のまま据え置きということになりました。但し、今までBだったのがAになり一挙に8%から21%となる品目(学用品など)もあり、多くの人がバケーションから戻り、学校では新学期が始まる9月からは、国民にとっては、なかなかシンドイ秋が始まることになりそうです。

一方で、国家予算だけでなく、各自治州政府や各市町村政府の財政も、同様に大幅な削減を迫られている今日、大幅な予算カットの影響は教育、医療、福祉など今までアンタッチャブルとされていた領域にもどんどん侵入。同時に、新しい税金の導入(観光税、ごみ税などなど)やら、公共交通機関の値上がり実施され、行政機関合併やら公務員削減やらで失業率はさらに増える一方。

数日前発表された、今年第2四半期の経済成長率はEU平均がマイナス0.2%。2011年4四半期のマイナスから2012年のゼロ成長となり、ここで横ばいを期待したにも拘わらず、再びマイナス成長へ。
イタリアがマイナス0.7%、スペインがマイナス0.4%。ドイツは0.3%のプラスだったものの、ユーロ圏全体に足を引っ張られたらしいです。

ほんと、こんな世の中だからこそ、自分にとって大切な人や大切のものをしっかりと見極め、今自分にできることを一生懸命やっていくしかないですね。



丘の上の公園

 
夾竹桃が満開の公園と、その向こうに広がるマドリッドの街(スモッグもね)


夾竹桃の日蔭で一休みのルーシー(犬も日射病になりそうな暑さ)



下町のお祭り


マドリッドの下町(ラストロ近辺)聖カリェターノのお祭り



聖カリェターノ教会



聖イシドロ公園


暑い中、頑張って、聖イシドロ公園までやって来ました。


大きな木の陰、ここなら涼しいねぇ、ルーシー。


公園の名前の由来となっている、聖イシドロの祠(Ermita de San Isidro)ここはマドリッド守護聖人、聖イシドロが奇跡を起こしたと言われる泉があります。年に一度、5月15日の聖イシドロの祭日に一般に公開されるこの泉、いろんなご利益があると言われているそうです。白い塀の後ろは聖イシドロ墓地、スペインの有名な人たちのお墓もここにたくさんあります。

 
祠へと続く道の名前は「5月15日通り」、その日には聖イシドロのお祭りで屋台がぎっしりならびます。かつては、奇跡の泉の水を汲んで帰るためのBotijo(陶器でできた水筒ですが、不思議な形のせいか、結構冷たいまま保つことができるのです)がこの道沿いに売られていたそうですが、今ではほとんど見かけなくなりました。


同じ道路の、祠から街中へ向かう方向。写真左手を下るとマンサナレス川、右手の土手を上ると聖イシドロ公園です。スペインの有名な画家、ゴヤの描いた絵にPradera de San Isidro(聖イシドロ祠の土手原)という作品がありますが、このあたりです。

 
聖イシドロ公園から見渡すマドリッド市街、聖フランシスコ教会の丸い黒い屋根が見えます。ゴヤの絵に描かれた人々が見たのは、たぶんこんな風景だったのでしょう。


Pradera de San Isidoroを走り回るルーシー。


公園の中を少し行くと、サッカー場が眼下に見えてきます。あの有名なレアル・マドリッドの他にもうひとつスペインリーグに入っているマドリッドのチーム、アトレティコ・マドリッドのスタジアムで、マンサナレス川に面して建っています。



マドリッドの街を環状に走る自動車専用道路M30がこのマンサナレス川沿いに走っていましたが、数年前、スペインの不動産バブルがはじける前、当時のガジャルドン市長が鳴り物入りで進めた都市改造計画の一環としてこの一帯のM30を地下に通し、その上に緑化公園を造りました。市内の交通の大動脈であるM30をほじくり返し、恒常的な渋滞と世界一危険と言われた通行状態を市民は何年間も我慢して市長の大構想に付き合わされ、できあがったのが、美しい?この公園。美しいかどうかは個人の主観なのでなんとも言えませんが、この大構想のつけは、ガジャルドン市長が市長の座をあっさりと捨てて中央政府の司法大臣に収まった後も、スペインで一番財政赤字の大きい街という形でマドリッド市民に残されました。