ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

エル・イエロ島の海底噴火

スペイン語Veranillo de San Miguelという言葉があります。9月29日は聖人San Miguel(聖ミカエル)の日、夏が終わり、Equinocio(昼と夜が同じ長さ、日本ではお彼岸の中日にあたる)が過ぎても、まるで夏のような強い日差しが戻ってくる日和のことを言う表現なのですが、今年は10月2週目になってもVeranilloどころか、日中の気温がスペイン北部でも30度を超える真夏のような日が続いています。日は短くなっているので、朝夕は涼しいのですが、日中は暑いし、ほぼ3か月ほとんど雨が降っていないのです。青い空と気持ちいい気候が続いて嬉しいような、でもとんでもないしっぺ返し、つまり想定外の天災がやってくるんじゃないかと不安を禁じ得ない今日この頃です。


そんな中、スペイン中が注目しているのがEl Hierroの地殻活動とマグマの動き。El Hierroってどこ?という人もたくさんいるでしょうが、アフリカ大陸の西に位置するカナリア諸島(東北から南西方向にLanzarote, Fuerteventura, Gran Canaria, Tenerife, La Gomera, La Palma, El Hierroの7つの島からなる)の中でも、最も南西に位置する島がEl Hierro。カナリア諸島はスペイン領、17ある自治州のひとつがカナリア州なのです。El Hierroは他の島々同様、もともと火山帯の上にあり、地震なども多い地域ですが、今年の夏、地底のマグマの動きが活発になったため地震が多発するようになり、専門家チームが常駐して調査に当たるとともに、7月19日以降、警戒レベルが通常のグリーンからイエローに引き上げられ、現在まで規模の大小はあるものの合計9964回の地震が観測されていました。
10日月曜に海底のマグマが島の最南端にある岬La Restingaに向かって移動していることが解り、11日火曜日にこの町の住民に対して避難命令が出されました。近隣の村の親類縁者の家や避難所に身を寄せた住民が不安な夜を明かした翌日、12日水曜日に専門家が乗り込んだ沿岸警備隊の船が付近の水域を巡回したところ、海水表面が茶色に変色した水域が2か所あり、強い硫黄臭が立ち込め、魚の死骸やサンゴの破片が浮いていることが判明。専門の調査船が到着して海底を調べるまでは正確な数字は出せないとしながらも、地学・海洋学の専門家チームは月曜の夜にLa Restinga近くの海底の2か所でマグマが噴出し、海底噴火が起こったと予想、ひとつは陸から3.7㎞地点で深さは750m、もうひとつは陸から2.5㎞で深さは500mとしています。
活発な動きを見せていたマグマがとりあえずは海底の2か所の亀裂から吹き出したことによって、陸地での爆発的な噴火の危険は回避されたとしながらも、海底に生じた亀裂からマグマが噴き出し始めたことによってマグマの流れが速くなることから、この後どのような動きに発展していくのかは、専門家たちも予測は不可能としています。
海底の様子を調査できる装備を備えた専用船舶はすぐには調達不可能ということから、とりあえずGran Canaria島に居た海洋調査船がEl Hierroに向かい、14日朝にLa Restingaに到着、海底噴火の起こった地域一帯の調査を開始。ヘリコプターと調査船による探査の結果、海底のマグマ噴出箇所は既に陸から2.5㎞深さ150mのところまで接近上昇しているらしいことが判明。調査中に、大きな岩の破片やガスが海面に湧き出ている現場に遭遇、これは爆発的噴火の可能性を示唆する兆候であると判断した専門家チームは急遽、調査船とヘリを陸地へ緊急避難し、陸地のLa Restingaの強制避難区域の半径を1㎞拡大する指示が出されました。
科学者や専門チームがデータを分析し、人的被害を防ぐため出された避難命令に従って住民は着の身着のままで避難してから既に5日が経過。地底のマグマがどのような動きをするのか、大自然を前にして、人間はただじっと待つことしかできない様です。

(出典:El Pais紙電子版のグラフィック)