ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

あべこべの世界〜歴史記憶法、グルテル事件、ガルソン判事〜

12月18日の記事で書いたパコ・イバニェスの歌「El Mundo al reves(あべこべの世界)」が聞こえてきそうです。

汚職取締特殊検察(検察特捜部)の要請で民衆党組織と同党が与党である多くの地方自治体政府に深く浸透していた組織的汚職網(グルテル事件)の捜査を開始した全国管区裁判所のガルソン判事が、今週、被告として最高裁に出廷し、証言しました。この裁判はグルテル事件の主犯格の弁護人らがガルソン判事を背任罪で最高裁に告訴したもの。理由は2009年2月6日にガルソン判事の指揮で行われた一斉摘発捜査で逮捕された主犯らと、彼らに面会に来た弁護士との会話をガルソン判事が傍受するよう指示したのは「憲法で守られている被疑者の弁護権利を侵すと同時に、判事としての背任行為である」とするもの。最高裁の検察は背任罪は存在しないとして立件を棄却したものの、2010年4月、最高裁判事は告訴を受理、裁判が行われことになった次第。


グルテル事件自体は、ガルソン判事がその汚職網を摘発後、次々と汚職の内実が露呈され、起訴された被疑者の数は50名を超え、その中には市議、州議、国会議員、自治体政府要人などが挙がり、無処罰特権の存在から捜査担当が全国管区裁判所からTS(最高裁)、TSJM(マドリッド高等裁判所)、TSJV(バレンシア州高等裁判所)などに移行し、遠大な捜査が続行中で、その主犯格の審理が未だ行われていないのに、この汚職網を摘発したガルソン判事が彼らより先に被告として法廷に立たされた訳です。グルテル事件主犯格らの弁護人からなる原告は「ガルソン判事から17年間裁判官資格を剥奪する」ことを求める一方、検察側は「背任罪は存在せず、無罪」との見解を主張し、ガルソン判事とその弁護人は「背任罪は存在せず、無罪」を主張。今週、月曜日には最高裁法廷にてガルソン判事本人および弁護人による口頭弁論、翌日には原告側弁護士らによる口頭弁論が行われ、木曜日に結審し、あとは最高裁の判決を待つのみとなりました。


月曜の朝、最高裁の入り口にはガルソン判事を支援する多くの人々が集まり、El Juicio de Verguenza !(スペインの恥を晒す裁判)、El Mundo al reves!(あべこべの世界)などと書かれたプラカードが見られました。
この裁判は、現在、最高裁においてガルソン判事に対して起こっている3つの訴訟の内のひとつ。一人の判事が3つの裁判の被告として訴えられていると聞くと、何もその背景を考えずに「なんじゃその悪徳判事は!」と思ってしまう人も居るでしょう。しかし、司法の政治からの独立、法曹界にある派閥、法治国家としてのスペインの資質などを考えるべき良い機会とも言えるでしょう。
ガルソン判事の裁判の背景を知るために、このブログを立ち上げるよりずっと前に書きとめていたメモの内容を記載してみました。ちょっと長いので、重いですが。

メモ(1) ●2008年12月、歴史記憶法に思うこと
メモ(2) ●2010年5月14日、ガルソン判事職務停止命令

これら2件の長い長い記事読んで背景を整理した後、ガルソン判事の裁判の経過をまたこのブログでアップしてみようと思っています。