ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

深まる秋、日々雑感

早いもので、今日から11月。今日は国民の祝日Dia de todos los santos、日本語では万聖節、あるいは諸聖人の日と呼ばれていますが、要は日本のお彼岸やお盆に当たる日で、年に一度、ご先祖様や亡くなった家族に会いにお墓参りに行く日です。スペインの花屋さんの年間売り上げの30%がこの時期に集中するそうです。

一昨日の日曜にスペインは冬時間に変わり、朝は明るくなったけれど、夕方は日暮れが早くてすぐに暗くなってしまいます。これから冬至までの2か月弱、一年で一番さみしい季節。この一番物悲しい季節をなんとかやり過ごせるように発明されたのがクリスマスなのかも知れませんね。冬至さえ超えれば後は「冬来たりなば、春遠からじ・・」と、気持ちも明るくなります。
私にとってこの季節は、「里の秋」(しーずかーなー、しーずかなー、さーとのあーきー・・・というあれです)であり、目に浮かぶのは「元祖浪速屋の柿の種」の贈答用化粧缶(新潟は長岡の名産品ですが、ちょっとローカルすぎ)に描かれているあの風景です。
遠く離れたスペイン、マドリッドの秋、里の秋の景色とは違いますが、澄み渡る青空の下、日ごとに増えていく落ち葉を踏みしだいてルーシーと散歩していると、移りゆく季節の中に今こうして元気でいられることのありがたさを感じずにはいられません。








さて、ここ数日、スペインのメディアで聞こえてくること・・・・
EU金融危機打開策を審議するため、EU27か国の首脳会議、そしてユーロ圏首脳会議が行われた結果、ギリシャ国債を持つ銀行がその債権の50%を放棄する、EU内の銀行(特にスペインの銀行に対して厳しい処置)の中核的自己資本を増強する、EU経済安定化基金の資金の増額、という3つの具体策が議決されました。この具体策が発表された翌日、世界中の株式市場の株価は一斉に値上がったものの、翌日には再び下降。「市場」とはどこまで貪欲で、どこまで猜疑心と不信に繰られているものなのか・・・。そしてEUからのプレッシャーと「これ以上の緊縮策はもう御免だ」というギリシャ国民の板ばさみで窮地に立たされたパパンドレウ首相、NOと出ればユーロ圏離脱はおろか国家経済破綻も覚悟せねばならない背水の陣で「国民投票」という切り札を出しました。そして!またもや「金融市場」は大混乱。多くのギリシャ国債債権を持つ大手銀行をかかえるドイツとフランス、ギリシャの次に槍玉に挙げられているイタリアとスペイン、そして市場の投機思惑に翻弄され続けるEU。景気回復どころか緊縮に次ぐ緊縮でどんどん経済が収縮し、失業者が増える一方。市場に振り回わされ、市場の顔色を見ながら一喜一憂し、右往左往する各国首脳や国際金融機関。彼らが守りたいものはいったい何なのでしょう? 大手銀行が倒れないように血税を注入し、財政赤字の多い劣等国には緊縮政策、予算カットを強制する、その結果、国民は増税と経費削減(教育、医療、福祉など公共サービスの縮小)という二重苦を強要されています。投資というマネーゲームのつけを国民に押し付けているように見えてしかたありません。


11月20日の総選挙、公式な選挙戦開始は今週末からとは言え、実質的にはいずれの政党も選挙戦はまさに今が佳境。現与党で統計では野に下ると見られている社労党、第一野党で政権に返り咲くと予想されている民衆党、いずれも「雇用創出、景気回復」を前面に掲げていますが、「デフィシット・セロ(財政赤字ゼロ)」という命題を前に打ち出すマニフェストは具体性にも現実味にも欠けて見えます。
公共サービスを切り落として支出を減らすのではなく、お金のあるところからお金を徴収して今あるサービスを維持するという社労党の方が、「税金を減らし、雇用を創出する」とまるで手品のようなマニフィエストを掲げる民衆党よりも現実的に聞こえるのですが、世論調査では圧倒的に民衆党に分があるようです。二大政党の首相候補者による一対一の討論ショーが11月7日テレビで生中継される予定。民主化後スペインでは総選挙前に毎回、社労党候補と民衆党候補の一騎打ち討論番組がライブでオンエアされてきました。今回、民衆党のラホイ党首は2回目、社労党のルバルカバ候補は初めての登場ですが、舌鋒の鋭さで知られるルバルカバ氏がどのような論戦を展開するのか、楽しみです。



経済の低迷と収縮、暗いニュースが多い中で、スペイン経済にとって明るい出来事がありました。10月25日、サウジアラビア政府が、メディナとメッカを繋ぐ高速鉄道プロジェクトをスペイン企業12社からなるコンソーシアムが落札したと発表。年々、巡礼者の輸送需要が増えているこの二都市間、450kmを結ぶ複線の高速鉄道を12年間で建設、運営、メンテナンスまで包括的に行う巨大プロジェクトの総予算は67億3600万ユーロ、現在までスペイン企業が海外で受注した最大のプロジェクトとなるそうです。勧業省の支援、国家のトップセールスなど、官民一体で推し進めたプロジェクトに参加しているのは次の12企業;Adif, Renfe, Ineco, Indra, OHL, Consultrans, Copasa, Imathia, Cobra, Dimetronic, Inabensa y TALGO。



ところで、2007年まで右肩上がりのスペイン経済を牽引してきた建設業、その中でも大手ゼネコンがとっても元気らしいです。不動産バブルが崩壊したスペインでは、不良債権を抱える金融機関や財政赤字に苦しむ政府や自治体からは出資や公共事業などの内需は望めないと早々と見切りをつけ、お金をたくさん持っている新興国に活路を求めた大手ゼネコン、EUの不況などどこ吹く風、ばんばん大口受注を増やしているのだそうです。
今日11月1日付けの経済紙Cinco Diasの記事によると、 ACS、Ferrovial、FCC、Acciona、Sacyr、OHL、San Joséなどの大手 ゼネコンによる海外での受注プロジェクト総額は2005年には50億ユーロ、06年に70億ユーロ、2008年には一挙に184億ユーロに成長し、2010年までの5年間の総受注額が700億ユーロに達しているとのこと。これらゼネコンの活躍の場はサウジアラビアカタールを始めとする中東、南米、中米、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど全世界に広がっています。