ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

市場経済原理と人々の幸せ

かなりご無沙汰をしてしまいました。
相変わらず、世の中なんかおかしいだろう、と思わずにいられないこと起こっておりますね。

世界的な医薬品会社Rocheはギリシャに対して医薬品の販売を停止。未払が溜まっていることと、ギリシャ政府の支払能力を信用できなくなったためでしょうか。アテネ中心地の公立病院、最先端技術を使ったがん治療を行おうにも抗がん剤を入手できず、患者を前にして医師は手をこまねくしかないとか。医療技術の進歩や最先端の医薬品を使うことで多くの人命が救えるようになったはずの現代、あまりに厳しい市場経済の掟に振り回わされて、経済活動を含めた人間の全ての活動の最終目的であるべき人類の幸せが全く忘れ去られてはいませんか?本末転倒ではありませんか?
ギリシャでは、教育や公共医療サービスの予算削減、公務員削減など政府のドラスティックな財政引き締め政策に対し国民の不満が爆発、ストが相次いでいる一方、ギリシャ政府はEUIMFの資金援助無しには10月以降支払い不能に陥るのは必至と、国家の破たんを避けるためEUIMF, ECUトロイカと必死の折衝を続けている。そしてそのためにはさらなる財政引締政策を迅速に実施することによってこのトロイカの信用を得なければならない。そんなデリケートな折衝の真っ最中、また、例によって信用格付け機関のフィッチが「ユーロ圏から追放されることはないだろうが、ギリシャは支払い不能に陥るだろう」と打ち上げたものだから、またもや「市場」は過敏に反応して、欧州全体の株式市場は大荒れ。


マドリッド自治政府が財政引締政策の一環として打ち出した政策は、ESO[中等教育]教師の受け持ち授業時間を週18時間から20時間に増やし、Interinos(自治州の試験によって恒常的な教員ポストを確保していない臨時雇用教師)3000人を削減するというもの。教師らはこの政策に真っ向から反対し、9月の新学期開始早々、ストに突入、今日で3日目です。
また、中央政府の文部省大臣Villalonga氏は予算削減が教育という聖域に踏み入れるべきでないと公言し、マドリッド自治州知事Aguirre女史の反感を買い、公の場で散々こき下ろされる始末。
教育予算削減に反対するデモ行進に教員、生徒、父兄たちを始めとする数万人が参加する一方、当のAguirre知事、「週たった18時間しか仕事しない教員は他の地方公務員と比べても全然働いていない!」と言って見たり、「教育課程の一部が義務教育であり無料であるべきとするなら、それ以外の部分は有料であってもよいではないか」とのたまったものだから、さあ、大変。第一の失言には「教員の労働は授業時間だけでなく、その他様々な活動を含めて他の地方公務員と同様週37時間働いている。私の勘違いでした」と謝罪、第二の失言には「有料でもいいと言ったのは、大学院のことで、決して現在の無料義務教育制度を変えるという意味合いではない」と訂正。
ESOとは日本でいう中学校か
ら高校1年くらいまでに相当し、理数系文化系などの選択を決めるまでの重要な課程ですが、今回の教員数削減によって、理科系の実験授業、実地授業、校外活動などができなくなる、あるいは管理する教員が足りないため図書館の閉鎖を余儀なくされる学校などが続出し、生徒たちや父兄からも不満の声が多く挙がっているようです。
また、公立学校への割り当て予算を削った分を私立学校への助成金に当てているとして、Aguirre自治や教育担当省に対する非難の声と公立学校教育を擁護する声が多く聞かれるようです。


スペインのアルバセーテでは20日にIberdrola(電力供給会社のひとつ)が市立図書館と私立スポーツセンター2か所および観光案内所の電気供給をストップ。2009年12月以降の不払いが1,000,000ユーロを超えているためとか。6回に及ぶ勧告に対して市役所側からの返答がなかったため強硬手段に出たとIberdrola側は主張、数か月前に政権に就いたPP市長は具体的な話し合いの提案がなかったのに強硬手段に出るとは言語道断と言っていますが、スポーツセンターで泳いでいたり、更衣室で着替えていたり、図書館で勉強していたりした市民は、突然電気が消えてびっくりですよね。


上記3件のニュースは、国家政府、自治州政府、地方自治体政府の財政赤字が引き起こしたものですが、結局被害を蒙るのは国民や州民や市民、つまりずっと税金を納めてきた一般の人々。為政者の失敗のせいもあるでしょうが、やっぱり「市場経済」の掟が優先されて、人々の幸せは無視されてますよね。