ルーシーママのスペイン便り

ルーシーは2009年にマドリッドに近い村で生まれたトイプードル、ママはえらい昔、日本に生まれ、長い間スペインに住んでるおばはんです。

23J スペイン総選挙、スペイン右傾化に歯止め、しかし混迷を極める結果に!

スペインの夏真っ盛り、7月23日(日)スペインの総選挙が行われました。

民主化後のスペインで、真夏に行われた初めての総選挙、23J。

2023年は春に地方統一選挙、晩秋に総選挙と予定されていましたが、5月28日に行われた地方統一選挙の結果を受けて、5月30日に中央政府のペドロ・サンチェス首相が国会を解散し、総選挙を7月23日に行うと発表したのは以前の記事でも書きました。

 

各政党はもちろんのこと、選挙管理委員会も大慌て、国民も大慌て!だって、スペインで7月と8月はバケーションの季節、選挙人名簿登録されている場所を離れる可能性があるし、投票立会人に選ばれたらバケーション返上しなければならないし! 

ちなみにスペインは、各投票所において選挙が正しく行われるの責任を持って管理するための立会人は各投票所に登録されている選挙人名簿の中から無作為に抽選で選出され、正当な理由がなくこの義務を怠るとかなり厳しい罰則が科されます。なので、投票立会人の抽選が行われるまで、みんな戦々恐々でした。実際に、バケーション時期を変更したり、中止したりする人もいたとか。

 

5月30日から実質的には選挙戦が始まっていたようなものですが、正式な選挙運動期間は7月7日(金)午前零時から22日(金)の24h00まで。スペインでは選挙は通常日曜日に行われますが、選挙運動は金曜の24h00で終了、土曜日は「Jornada de Reflexión」(熟考・熟慮の一日)と呼ばれ、一切の選挙運動が禁止されます。

 

 

 

 

 

さて、選挙が終わってみると、いろんな意味で予想が覆されましたが、以下の3つは特に注目に値します

 

1)投票結果

地方統一選挙では期せずして保守系の民衆党(PP)が圧勝、極右のVOXも躍進したため、総選挙でも同じことが起こり、PPの単独過半数獲得、あるいはVOXとの連立で過半数獲得、と予想されていました。

1975年フランコ没後の民主化以降初めて、極右政党が内閣に入閣する事態になるか?と言われる中、それだけは阻止すべしという民意が動いたのか、PPとVOXの議席保守系の他の政党の足しても国会(下院)350議席過半数には達しない結果となり、一方、現政権(左派連立)のペドロ・サンチェス首相率いる社会労働党(PSOE)は完全に負け戦と予想されていたにもかかわらず、単独議席数だけを見ると、前回、2019年11月の総選挙よりも若干議席数を増やしました。左派革新系政党は分立が激しくそれぞれが単独で選挙に臨むと結局はいずれも議席が少数かゼロの可能性がある中、現政権の副首相、ジョランダ・ディアス女史がそのカリスマと交渉力で複数の左派革新政党を束ねて創った新政党SumarはVoxに次ぐ4番目に多い議席を獲得。

 

2)投票率

バケーションの季節だからどうせ棄権が多いだろう!と予想されていたにも拘わらず、実際は2019年11月の総選挙よりも高い70.40%の投票率でした。国民の関心の高さが反映されました。

 

3)郵便投票

5月28日の地方選挙の際、いくつかの市町村で郵便投票による不正が発覚、再発防止のため早急に規則改正が行われました。以前は郵便局に出向いて郵便投票の申請をするときのみ身分証による本人確認が必要でしたが、郵送で送られて来た投票用紙に記入して郵便局に提出する際には本人確認が不要だったものを、改正後は申請時と提出時の両方に郵便局での本人確認が必要な形に変わりました。

今回の総選挙はバケーションシーズン真っ只中の実施ということもあり、事前に郵便による投票を選択した人が史上空前の200万人越えが予想され、郵便局スタッフのキャパが追い付かずに郵便投票を申請した人に投票用紙が期日内に届かない事態が危惧され、選挙そのものの信憑性にも疑いが生じる、とPPのアルベルト・ヌニェス・フェイホー党首が発言していました。ところが、スペイン郵便は選挙管理委員会と連携して一念発起!郵便投票の作業を行うための臨時スタッフを大量に一時雇用し、郵便投票提出期限を当初の20日22h00から21日14h00まで延長して、見事にそのミッションを遂行して見せました。

 

さて、今回の総選挙は、政治の流れが再び変わったことを示しているようです。

1978年の民主化以降、長年にわたりスペインの政治は革新系社会労働党(PSOE)と保守系民衆党(AP、後にPPに改名)の2大政党が交互に独占して来ました。総選挙では2大政党のいずれかが単独で国会議席過半数を得て、単独与党で内閣を組閣というパターンでした。ところが、2018年にこのパターンが崩れ、「連立政権」という発想が生まれました。

 

その辺の経過を、少し思い出してみたいと思います。

2018年6月1日、第2期ラホイ政権(PP単独政府/第1期2011-2015年/第2期2015-2018年)3年目、PP党全体が関わっていたとされる膨大な汚職システムが摘発された裁判、グルテル事件が決定的となり、本来なら2019年に任期満了だったところ、2018年6月1日に国会にて不信任案が議決され政権が倒れます。ラホイ首相に対して不信任案を提示し、国会議員の過半数を超える賛成を得たPSOEの党首ペドロ・サンチェスが首相となり新政府が誕生。不信任案による政権交代民主化後スペイン初。

 

2019年4月28日、4年毎に行われる総選挙が行われ、ラホイ首相に対する不信任案議決によって首相となったペドロ・サンチェスが初めて総選挙で国民の支持を得られるかが試されるものでした。

結果は:

PSOE(革新系社会労働党)123、PP(保守系民衆党)66、Cs(中道保守系)57、Unidos Podemos(革新系)33、Vox(極右)24議席

左右中道の分散が激しく、単独での過半数は不可能な上、連立政権組閣に向けて水面下で様々な駆け引きが行われるも、スペインの政治そのものが連立政権というものに慣れておらず、PPとCsの連携、あるいはPSOEとUnidos Podemosの連携など、模索はされたものの、成果は得られず、11月に総選挙のやり直しとなってしまいます。

 

2019年11月10日やり直し総選挙の結果は、

PSOE120,PP89, Vox52、Unidos Podemos26、ERC(カタルーニャ独立系左派)13、Cs10

やはり単独での過半数は不可能。右派はPPとCsの連立では全く数が足りない上、台頭してきた極右Voxとの連立政権の構想は未だ現実視されていません。左派はUnidos Podemosのリーダー、パブロ・イグレシアスとPSOEリーダーのペドロ・サンチェスの間でぎりぎりまでの駆け引きが行われ、この2党の連立政権を実現すべく、その他の革新系政党など(ERC, En Comu, Mas Pais, EH Bildu, PNVなど)に根回しをした結果、絶対過半数に満たない議席ではあるものの、2党連立政府組閣に成功し、2020年1月から新政府が発足。直後にコロナ禍に突入、2022年4月にはウクライナ侵攻。そんな中、左派革新系連立政府は、非常に多くの法案を国会で通過させてきましたが、過半数の賛成を得るため、法案ごとに他の政党との交渉を行うという、それ以前のスペインではなかなか見られなかったダイナミックな国会運営が行われ、それなりの結果を出して来ました。

 

そして、このブログの5月30日の記事に書いたように、2023年5月28日の地方統一選挙で、予想以上に右傾化が進行していることを示す結果が出ました。

中道右派を謳ったCsが実質消滅し、PP支持が大幅に増加、そして極右VOXもその勢力を伸ばしました。

6月26日と28日の記事で、地方統一選挙後の市町村政府や自治州政府の組閣について説明しましたが、多くの市町村やいくつかの自治州で、PPとVoxの連立が現実のものとなり、Vox議員が入閣し、Voxの政治理念が自治州や市の政策として実際に現れてくるのを国民は目にしてきました。

 

 

7月23日の総選挙の各政党の得票数を示した図がこれです。

 

 

 

2015年以降、右派も左派も、PPとPSOEという2大政党独占路線から、より細分化した様々な政党が議席を得て、政治の多様化が進んでいた訳ですが、今回の選挙では、PPとVOXの保守連立か、PSOEとSumarの革新連立かという二者択一を念頭に、本当は少数政党に入れたいところを組閣の可能性を持つ2大政党のいずれか(PPかPSOEか)に投票した人が多数いたために、再び2大政党の票が伸びる結果になったようです。

ただ、以前の様に2大政党のいずれかが単独で組閣できるようなシンプルなものではなく、2大政党の党首それぞれが、少数の議席を持つ複数の政党と交渉して連立政権の組閣を模索するという、よりダイナミックな時代に突入したようです。

 

下の図を見ると、国会議席過半数の176議席の賛成を得て組閣するには、PPもPSOEも一筋縄ではいかないかけ引きと交渉が必要なことが明らかです。

 

 

今後、まずは8月17日に新しく選出された議員による最初の国会(下院)が開催され、そこで下院議長が選出されます。その後、2カ月以内に総議席過半数を超える賛成を得て組閣を達成しなくてはなりません。それが叶わない場合は、2019年のように総選挙のやり直しとなってしまいます。

PSOEとSumarが連立することはすでに確定していますが、ペドロ・サンチェスPSOE党首とジョランダ・ディアスSumar党首が協力してそれ以外の政党との駆け引きで過半数を得ることができるか? あるいはPP党首のアルベルト・ヌニェス・フェイホー氏が保守系政権との連立を模索するのか、これからしばらくは彼らの手腕が試されます。

 

Madre de Lucy

 

アフターM28、スペイン右傾化と極右ポピュリズムの台頭 (II)


今日も暑いです!

とはいえ、今年初の強烈な熱波は予報では一昨日の月曜がピークで、金曜から涼しくなるとのことなので、じっと我慢していればやり過ごせます。何週間も続いて先が見えなかった去年の今頃の熱波と比べると気持ち的に全然違います。

 

さて、一昨日は28M後の各市町村(Municipios)の動きを分析しましたが、今日は自治州(Comunidades Autonómicas)に関して見て行きましょう。

 

★スペインと日本の地方選の違いに関しては5月30日投稿のこの記事で説明していますのでご覧ください。

 

1978年に民主憲法が制定され、歴史や文化を尊重した形で地方自治体が誕生し、それまでの中央集権的な政権が独占していた様々な権利が自治州政府へ移譲されて行きました。

現在、スペインは19の地方自治体によって治められています。そのうちの17は自治州(Comunidades Autonómicas)で2つはセウタとメリージャという歴史的地理的に特殊な事情を有する自治都市(Ciudades Autonómicas)です。

自治州議会の議員を選ぶ選挙は基本的には市町村議会選挙と同時に行われるのですが、議会による首長に対する不信任決議、首長による議会解散、スキャンダルなどによる首長の辞任、などの諸事情により、それが前倒しされることがあります。

因みに、ガリシア自治州とバスク自治州は2020年に、カタルーニャ自治州は2021年に、カスティーリャ・イ・レオン自治州とアンダルシア自治州は2022年に自治州議会選挙が行われており、今回2023年の28Mで選挙が行われたのは、アラゴンアストゥリアス、バレアレス、カナリアス、カンタブリアカスティーリャ・ラ・マンチャバレンシア、エクストゥレマドゥーラ、ラ・リオハマドリッドムルシアナバラの12の自治州とセウタメリージャの2つの自治都市でした。

 

一昨日の記事で少し言及していたカスティーリャ・イ・レオン自治州ですが、スペイン民主化以降の自治州選挙において、最初の1期4年間のみPSOE社会労働党過半数を取り知事を出したのですが、1987年にホセ・マリア・アスナル氏が知事に選ばれて以降(アスナル氏はご存知の通り、後に1996年~2004年までスペイン中央政府の首相を務めています)現在まで歴代すべての知事はPP民衆党から出ています。

 

直近の自治州選挙は2022年2月で、それ以前はPPとCs(保守中道のシウダダノスと呼ばれた政党)との連立で議席過半数を獲得していたものが、この選挙でCsが事実上消滅し、VOX(極右)が一挙に台頭したため、過半数を達成するためにPPはVOXと連立し、スペイン政治の歴史上初めてVOXが自治州政府に入閣するマニュエコ自治州政府が誕生。このマニュエコ知事の政府では、コンセヘロとよばれる州政府組閣メンバーのうち、副知事、工業商業雇用担当、農業担当、文化観光担当の4名がVOXから入閣しているのですが、VOX主導のいくつかの政策、例えば畜産業の感染症に関する考え方など、スペイン中央政府やスペインが属すEUが既に制定している規則やルールから逸脱するものもあり、現場で混乱が生じているケースが散見されています。

今回28Mの選挙では自治州においてもVOXの台頭が顕著で、自治州議会過半数を獲得するためにPPがVOXと連立する州がいくつかあるようです。

 

 

では、マドリッドから見て行きましょう。

 

民主化後1983年から1995年まで3期、マドリッドはPSOE社会労働党の牙城であり、中央政府首相はフェリペ・ゴンサレスマドリッド知事はホアキン・レヒーナという伝説の人を生み出しましたが、1995年にPPのガジャルドン氏がその若さとカリスマで知事となり2期務め、彼がアスナル首相の中央政府に抜擢されると、今度は大ベテランのアギーレ女史が3期務めて、PP民衆党が長きにわたり主導権を握りました。アギーレ知事3期目にPP党内の膨大な汚職事件、グルテル事件が明るみに出てアギーレ氏は身を引き、彼女の右腕や左腕だった政治家3人が彼女の後を継いで知事になりますが、いずれも次々と汚職による検察の捜査の手が及んで辞任に追い込まれ、マドリッド州のPP幹部がほとんどいなくなった状態の所に彗星の如く現れたのが若くて美人でもの負けん気の強いイサベル・アジュソ女史。党内にも他に対抗馬なし、野党もパッとしない中、2019年の州議会選挙で過半数には若干足りないものの、単独で州政府を組閣。法案ごとにVOXの力を借りるという手法で今日までネオリベラリズム的政策をグイグイ推し進め、その犠牲になった人も多い反面、絶対的支持層も増えています。その結果は今回の選挙結果に顕著に出ていて、単独で絶対過半数を獲得。これからアジュソ女史は更に思いのままグイグイ突き進んでいくことでしょう。

 

ラ・リオハ自治州マドリッド同様、PPが単独で総議席過半数を獲得しています。

 

 

M28後の自治州政府組閣に当たり、最もメディアを賑わせている州のひとつがバレンシア州でしょう。

中央政府アスナル首相が政権を取った時代(1996年~2004年)バレンシア自治州もPP民衆党が大きな力を持ち、その後も2015年まで歴代自治州政府を牛耳ってきましたが、グルテル事件の発覚により、バレンシアPPの幹部が軒並み崩れ、2015年の選挙ではPSOE社会労働党27議席+Compromis17議席+Podemos8議席による革新系3党の連立政府が誕生していました。

 

しかし、今回の選挙結果では、Podemosが消滅したことで、PSOE31議席とCompromis15議席を足しても過半数50議席に届かず、PP40議席がVOX13議席と連立して政府を組閣となるのですが、ここでひとつ問題が発生。VOXの自治州議会候補リストのナンバーワンのカルロス・フローレス氏は憲法を専門とする法学者でバレンシア大学の教授なのですが、2002年に、前妻に対する精神的虐待(常習的虐待、脅迫、名誉棄損など)を裁判で認められて禁固一年の判決を受けているため、PPとしてはVOXとの連立は不可欠なものの、連立州政府への彼の入閣は認めないという形で交渉を続けた結果、カルロス・フローレス氏は自治州政府には入閣しないが、7月23日に予定されている総選挙(国会議員選挙)において、VOXバレンシアのリストナンバーワンとして候補することになりました。

PPのカルロス・マソン氏が知事となって組閣する州政府では、VOXから3名が入閣、元闘牛士ビセンテ・バレラ氏が副知事兼文化担当となり、他の2名が農業と司法の担当となる模様。

PPとVOXの連立条件の中には、現中央政府が成立させたフランコ独裁時代の扱いに関する法律を無効にする、DV女性に対する性虐待の存在を認めない、LGBT法を無効にする、などスペイン中央政府EUの政策と衝突するものが散見され、カスティージャ・イ・レオン州同様に州民生活の現場で問題が生まれことを想像するのは難しくない状況です。

 

昨日、6月26日にバレンシア州議会の議長に、VOXのジャノス・マソ女史が選出されたのですが、彼女はラディカルなカトリック主義者であり、性教育の否定、妊娠中絶反対などを主張していることから、議長としての動静が注目を集めています。

バレンシアと同じような状況にあるのが、ムルシア自治州アラゴン自治州、バレアレス自治で、いずれも得票数の一番多いPPが3番目に得票数の多いVOXと連立して自治州政府を組閣する(2番目は得票はPSOE)ことになりそうです。

アラゴン自治州では州議会議長に選ばれたVOXのマルタ・フェルナンデス女史が、着任早々「Violencia de Genero(男性による女性虐待というDV)は存在しない、家庭内暴力と表現すべき」と公言、スペイン中央政府EUもViolencia de Generoという表現が確立していてその根拠となる法律も存在することから、物議を醸しています。バレアレス自治でも、バレンシアアラゴンと同様に、州議会議長は、VOXから選出されています。

 

 

今回の選挙で唯一、PSOEが単独で絶対過半数を獲得したのが、カスティーリャ・ラ・マンチャ自治州

カスティーリャ・ラ・マンチャと言えば、PSOE社会労働党の中でも際立った力を持った政治家ホセ・ボノ氏が1983年から2004年まで、6期続けて知事を務めた自治州で、PSOEの力が強い地域でした。ところが、2011年、アスナル首相の時代にPPの中央政府内閣で活躍したコスペダル女史が、地方政治に舞い降りて自治州の政権を握り、多くの支持者を得ます。しかし、巨大汚職グルテル事件で彼女も崩れ、2015年以降は、ホセ・ボノ氏の後継者ともいえるガルシア・パヘ氏が再度PSOE政権を取り戻し、今日まで2期、知事を務めていました。前回の選挙から2議席減ったとはいえ、17議席単独過半数を獲得し、ガルシア・パヘ氏は3期目に突入です。

中央政府の首相であるペドロ・サンチェス氏は、PSOE内のパワーゲームを勝ち抜いて若くしてナンバーワンとなり、2018年5月にPP政権のラホイ首相に不信任決議をぶつけて、驚くべきパワーとスピードで同年6月に首相に就任した訳ですが、そんなPSOE内でサンチェス氏といくつかの政策において一線を画してきたのがこのガルシア・パヘ氏。今回の選挙は多くの市町村はもとより、いくつかの自治州政府においてPSOEはPPに与党の座を明け渡してしまっている中、唯一PSOEの絶対的勝利を得た訳で、今後、PSOE党内におけるガルシア・パヘ氏の力が大きくなるだろうと言われています。

 

 

自治州政府組閣に関して、今一番揉めているのがエクストゥレマドゥーラ自治でだと思われます。

この自治州は1983年に最初の選挙が行われて以来、2007年までの24年間、PSOEのロドリゲス・イバーラ氏が6期連続で知事を務めて来た、PSOEの牙城ともいえる地域です。2011年から1期だけPPが自治州政権を握ったことがありましたが、2015年にはPSOEが返り咲いてフェルナンデス・バラ知事が誕生、2019年の選挙でもPSOE単独で絶対過半数を獲得して、同知事は現在まで2期目を務めていました。

ところが今回、PSOEとPPは両者とも28議席獲得して拮抗し、PSOEは4議席獲得したPodemosと連立しても過半数に届かない事態。PPは5議席を得ているVOXと連立することで過半数に達することができ、PPナンバーワンのグアルディオラ知事が誕生すると見られているのですが、これが今揉めているのです。

28M選挙直後にPPエクストゥレマドゥーラのナンバーワンであるマリア・グアルデクイラ女史は「VOXの価値観や政策を共有することできないので、VOXから自治州政府への入閣はあり得ない!」と公言していたのですが、その後、バレンシアムルシアアラゴンなどの自治州で、PPがVOXとの連立政府樹立へ舵を切っている中、彼女に対してPP本部からの圧力がかかり、一転してVOXとの政策プログラムによる連立(政府への入閣は引き続き拒否している)を模索する態度に変わり、VOXとの交渉にはもう少し時間が必要と主張しています。

 

PP民衆党の中にもVOXを自治州政府のメンバーに入閣させることをまったく問題としない派閥と、なんとかVOXの入閣を避けてPPの政策を展開したい派閥とがあるようですが、現時点では党内の実力者であるマドリッド知事アジュソ知事をはじめとする前者の派閥の力が優っている様に見えます。

 

このように、未だにいくつかの自治州政府の組閣が決まらない状態の中で、23J(7月23日)総選挙は、正式な選挙戦が始まる前から、既にスペイン各地で「暑い」前哨戦が繰り広げられています。

23Jでスペイン国会と中央政府においても右傾化が進むのか、あるいは革新勢力が歯止めをかけられるのか、真夏に実施される異例の総選挙は、スペインの熱波同様にとても熱いものになりそうです。

 

ところで、娘のルーシーも、あと1カ月で14歳。

いろんな病気と闘って、その都度おどろくべき生命力で頑張って来てくれたルーシー。

心からありがとう! そして元気でいてね。

 

Madre de Lucy

 

 

アフターM28(2023年統一地方選挙)スペイン右傾化とポピュリズムの台頭 (I)

 

スペイン語でSolsticio de Veranoと呼ばれる夏至が過ぎ、サン・ホアンの祭りが過ぎるとスペインは夏本番!という感じですが、まさに、6月24日から今年最初の熱波がスペイン全土を襲来。土曜、日曜と気温が上昇、今日月曜がピークとか。今日のマドリッド、最高気温38度、最低25度です。

 

さて、前回の投稿からちょっと時間が経ってしまいましたが、アフターM28の考察をしてみたいと思います。

★スペインと日本の地方選の違いに関しては5月30日投稿のこの記事で説明していますのでご覧ください。

 

まず言えることは、5月28日の地方統一選挙の結果は、スペインの政治勢力地図を塗り替えたということ。

単純に最も得票数の多かった政党の投票数とそのパーセンテージだけを前回2019年の地方選の結果と比較すると、各市町村(Municipios)も自治州(Comunicades Autónomas)も、PSOE(社会労働党)の赤色からPP(保守政党である民衆党)の青色へ変わったところが圧倒的に多かったことが分かります。

 

 

けれども、前回の記事で書いたように、市長や自治州の首長の選出は、日本とは異なる形で行われる、つまり、各市議会や自治州議会で各政党が得た得票数に戻づいて行われるので、なかなか一筋縄ではいきません。

 

市政に関しては、選挙の投票日から3週間以内に新しく選出された議員による市議会が市長を選び、市政を司る政府であるAyuntamientoまたはGobierno Municipalと呼ばれるものを組閣する規則になっているので、遅くとも6月17日までに市長を決める必要がありました。

単独政党で議会総議席過半数を占めている場合は、その政党の候補者リストのナンバワンの人が市長となるので、すんなりと決まります。今回PP民衆党が余裕で絶対過半数を獲得したマドリッドがこの例。28M以前はPPだけでは過半数に達せず、保守中道のCs(Ciudadanos)という政党との連立政権だったけれど、28Mで絶対過半数獲得で再選されたPP民衆党のアルメイダ市長は今後の政策は彼の思うまま!となることでしょう。

 



 

それと対照的だったのが、バルセロナの市長の選出。

カタルーニャ自治州の首都であるバルセロナ市の場合、政党の勢力地図には保守革新のイデオロギーに更にカタルーニャ民族主義が加わるのでかなり複雑になります。

まず、「カタルーニャはスペインという国を構成するひとつの自治州である」という考えの上に立つ政党(全国政党)として、保守系のPP民衆党、極右的とみられるVOX政党、革新系(PSCカタルーニャ社会労働党、革新的なEn Comu党など)があります。

一方、カタルーニャ独立主義の考えの上に立つ政党(独立派)として、保守系政党(2019年の選挙ではJunts per Catalunyaという名前、それ以前はCiU、という風にその名称がその都度変わっているのが紛らわしい政党ですが、今回2023の市議選ではCompromis Municipalという名前で、とにかくハビエル・トゥリアス氏を市長に!という戦略で打って出た)と革新系政党(ERCエスケラ)や無政府主義に近い政党(CUP)などがあります。

 

 

マドリッドのように単独で市議会議席過半数を得た政党はなかったので、水面下でこれらの政党間での駆け引きが盛んにおこなわれたようです。6月17日午後17h00に予定されていた新しく選出された市議による最初の市議会での投票によって最多数の支持を得た政党の候補者ナンバーワンが市長となる予定で、当日午前中まではメディアやほとんどの政党もCompromis Municipal(独立派保守系)とERCエスケラ(独立派革新系)の連立によって16議席の賛成を確保して、ハビエル・トゥリアス氏の選出が確実と見ていたのですが、最後の最後で大番狂わせが起きました。

非独立派の革新系PSCカタルーニャ労働党は10議席、非独立派保守系PP民衆党は4議席、足すと14議席で、独立派の16議席に勝てない。2013年から現在まで2期にわたってその強いカリスマ性でバルセロナ市長を務めたアダ・コラウ女史率いる非独立派の革新系政党Barcelona en Comuは9議席を得ていたのですが、市長交代を望むPPが同女史が新政府に入ることに難色を示していたのです。最後まで態度を保留していたBarcelona en Comuは「アダ・コラウが新政府に入らなくても、独立派保守政党のハビエル・トゥリアス氏を市長にさせないことを優先する」 ということで、市議会開始直前に非独立派の連立を受け入れたため、PSC労働党+PP民衆党+Barcelona en Comuの議員の賛成23票を得て、PSC社会労働党のリストナンーワン、ジャウメ・コルボニ氏が市長に選ばれたのでした。

カタルーニャ自治州では地方農村部などに行くほど独立主義派が力を持っているようですが、首都であるバルセロナは、スペインの民主化である1978年の憲法制定後、1979年の最初の地方選挙以降、歴代の市長は非独立派政党PSC(カタルーニャ社会労働党)から選出されてきました。ところが2011年の地方選で初めて独立派保守系政党(当時はCiUという名前)のハビエル・トゥリアス市長が誕生し、2015年まで務めたのでした。

移民問題、住宅問題、福祉問題などに関する多くの不満が市民の間に募っていた中、2015年の選挙で彗星のように現れ、革新的な政策をマニフェストに掲げ、フットワークの良さで人々をひき付けて新市長に当選したのがアダ・コラウ氏、その後、2期に渡り、この革新政治を率いてきた同女史は、バルセロナ市政が8年前と同じハビエル・トゥリアス氏の手に戻ることによって自分らが築き上げてきたものを反故にされることは絶対に避けたかった、ということのようです。

 

スペイン第3の都市、バレンシアはどうだったのでしょう?

前回の選挙では革新系の2政党(Compromis10議席+PSOE社会労働党7議席)連立政権で市長はCompromisのジョアン・リボ氏でしたが、今回の選挙ではこの2党の連立でも過半数の17には届かず、最多の13議席を獲得した保守系PP民衆党が、過半数には行かないものの単独で市政を率いるとしてカタラ女史が市長に選ばれました。カタラ市長は、党是として「気候変動」や「女性に対する暴力」を否定するVOX政党との連立を拒否し、市議会では法案ごとに他の政党を説得しながら市政を行うと宣言しています。

 

パルマ・デ・マジョルカ市でも、バレンシアと同じような状況。

29議席のうち、11議席を獲得したPP民衆党、8議席を得たPSOE社会労働党、6議席を得たVOX党ですが、最多議席を得たPPは過半数に至らないながら、VOXとの連立は拒否し、単独で政府を組閣することを決断しました。

 

 

アンダルシア自治州の首都、セビリアはどうでしょう。

 

スペイン民主化以来、PSOEスペイン社会労働党の牙城であったセビリア市ですが、31議席のうち、絶対過半数には行かないものの、PP民衆党が最多の14議席、次がPSOEの12議席を獲得。前回選挙までの結果が逆転し、保守系の市長が誕生しました。セビリアではPPは極右政党VOXとの連立は不要でしたが、自治州のいくつかの首都ではPPとVOXの連立政権が生まれつつあります。

 

 

バスク地方はどうでしょう。

バスク地方カタルーニャ同様、保守革新という縦糸に加えて、民族独立主義という横糸が加わるので、その政治勢力地図は複雑です。

 

ビルバオ保守系民族主義政党PNVの勢力が強い街で、1979年スペイン民主化後に選ばれた歴代市長はすべてPNVから出ています。今回の選挙の注目点は、民族主義左派政党EH Bilduビルドゥが大きく躍進したこと。それによって前回より議席数を減らしたPNVは早速PSE-EE(バスク社会労働党)と連立して安定した政権を確立し、PNVのアブルト市長を選出しました。独立派保守系のPNVが保守系全国政党のPP民衆党ではなく、革新系全国政党のPSOE社会労働党と連立するの?と思われるかも知れませんが、中央政権(国会)においても、与党であるPSOE社会労働党は法案通過のためにPNVと組むことが良くあります。

 

今ではETAと言っても知らない人が多いかも知れませんが、「バスク祖国と自由」という意味を持つこのテロ組織は、フランコ独裁政権下の抑圧に反発する形で1959年に結成され、スペインとフランスにまたがるバスク民族居住地域をひとつの独立国家として分離させることを目的として多くの活動を行ってきました。そのETAが2011年10月にテロ活動放棄を一方的に宣言し、2018年にその存在の完全消滅を宣言した訳ですが、ETAの政治的母体であったHB(HerriBatasuna)は民主化後の選挙でもバスク地方においてはかなりの支持を得ていました。北アイルランドIRAとSinFainの関係に似ているかも知れません。

1990年のバスク自治州選挙では18.33%支持率を獲得していたことに驚いた記憶が今も残っています。その後、HBが分解し、紆余曲折を経た後、Bilduを経て2012年にEH-Bilduとして生まれ、現在に至っていますが、今の中央政府の革新系連立政権では国会での法案通過におけるキャスティングボートを握る政党のひとつとなっています。

 

セン・セバスチャン市は、民族派の2党(保守のPNVと革新のEH Bildu)の力がかなり拮抗している所です。2011-2015にBilduが、2015年から現在まで2期、PNVが政権に就いています。今回はEH Bilduがに議席数を増やし、PNVと1議席差に迫りましたが、PNVは速やかにPSE-EEとPPと連立することで、安定した政権を作り、ゴイア市長が3期目を務めることになりました。

 

 

カスティーリャ・イ・レオン自治州の首都であるバジャドリ市は、まさに昨年2月に行われた(諸事情で前倒しとなったケースのひとつ)自治州議会選挙で起こったことのデジャブのような様相です。

バジャドリ市はスペイン民主化後の1979年の選挙以来、PSOEが4期16年、PPが5期20年、そして2015年から2期8年再度PSOEというように、2大政党が交互に政権を握ってきました。

今回の選挙の結果は、この2大政党が獲得した議席数が同じ11議席で拮抗し、3番目に3議席を得ていた極右政党VOXがPPと連立して新政権に参入。コンセハルと呼ばれる市政府の閣僚にあたる13名のうち、副市長、医療と治安担当責任者、商業と消費の担当責任者の3名がVOXから選ばれました。保守革新を問わず他の民主政党とはその主義主張を異にするVOX(地球温暖化を否定、女性に対するDVの存在を否定、LGBTを否定、など)が市政府の重要なポストを占めることで、様々な問題が生まれる可能性は、既にカスティーリャ・イ・レオン自治州政府の前例で散見されています。

 

同じことがカスティーリャ・ラ・マンチャ自治州の首都であるトレド市でも起こっています。

トレドと言えば、日本の奈良や京都を思い浮かべる古都、6世紀西ゴート族の時代から文化と宗教の中心となってきた街です。

ここトレドはスペイン民主化後の1979年の選挙以来、PSOE社会労働党とPP民衆党の2大政党が交互に政権を握ってきました。

2007年から現在までの4期、市長はPSOEから出ています。前回2019年の選挙の際は、革新系連立(PSOE12議席+Podemos IUが2議席の合計14議席で25議席過半数達成)によってPSOEのトロン女史が市長となりましたが、今回の選挙ではPSOEが最も多い11議席を得たにも拘わらず、現行政府で連立していたPodemos IUが1議席しか得られなかったため、合計しても過半数に達しません。一方、9議席を得たPP民衆党と4議席を得たVOX党が連立することで過半数となり、PPのナンバーワンが市長に選ばれました。最も得票数の多かったPSOEのナンバーワンである現職のトロン市長は野に下り、7月23日に予定されている国会議員選挙に出馬する模様。

16年以上続いた革新系政府から極右政党と連立した保守系政府に変わることで、DV問題、LGBT問題、環境問題などその政策に変化が現れるかも知れません。

 

と、ここまで、統一地方選28MのElecciones Municipales(市議会選挙)の結果とその後のAyuntamiento(市政府)組閣に関して、スペインの代表的な都市の例をいくつか見てきました。

ほとんどの市町村で保守系政党PP民衆党と極右政党VOXが連立することで議会の過半数を獲得することが可能ですが、PPの中でも、VOXとの連立を拒否するところと、即座に連立するところと、市によってその態度はまちまちです。

 

次回は、統一地方選28MのElecciones Autonómicas(自治州議会選挙)に関して見て行きましょう。

 

Madre de Lucy

 

2年ぶりの投稿、2023年5月28日スペイン統一地方選

ほぼ2年ぶりの投稿です。

私生活でも仕事でも、本当にいろんなことがあって、自分と向き合ってこのブログを書く気持ちになれないまま、こんなにも長い時間が過ぎてしまいました。

このままではいけない、自分の中にこもっているだけではなく、もう一度、自分の周りの世界に目を向けて、きちんと考えることをしなくてはいけない、と思うようになりました。

なかなかうまくは行きませんが、まず手始めに、2年間のブランクのあとのリハビリ的な感じで、一昨日の日曜日、2023年5月23日にスペイン全土で行われた統一地方選のことを考えてみました。

 

 

  

日本でも4月に統一地方選挙が行われたばかりですが、ここスペインでは、この日曜日、5月28日が4年ぶりの統一地方選でした。

その結果は、予想を大きく覆し、与党(PSOE社会労働党とPodemos Unidos左派革新系政党)が大敗し、最大野党のPP民衆党(保守系)とそれに次ぐ野党Vox(極右)が大きく躍進。これに慄いた政府は月曜の朝一番で、今年の末に予定されていた総選挙(国会議員選)を7月23日に前倒すと発表。

 

 

 

まず、すこし、スペインと日本の地方選の違いを説明させてください。

日本の場合、地方自治体が県であれ市であれ、議会選挙と首長選挙は別々で独立していますよね。ですから、市議会に最多議席を持つ政党と市長が属する政党が同じとは限らないですよね。

スペインの場合は、地方選は4年毎に通常2つの選挙が同時に行われます。スペイン国を構成する17の自治州政府の首長と州議会議員を選ぶ選挙と、スペインに存在する8000を超えるMunicipio(いわゆる市町村ですがここでは便宜上、市と呼びます)の市長と市議会議員と選ぶ選挙です。

いずれも各政党がランキングを付けた候補者リストを作成し、人々は州政府と市政府のそれぞれに自分の指示する政党に投票します。

その結果、各政党が獲得した投票数に応じて、州議会や市議会の議席数が割り当てられ、議席数の過半数を単独政党で獲得すれば、自動的にその党の候補者リスト1番の人が首長となり、議会も過半数獲得するのでその後の州政や市政の運営が容易となります。一方、単独で過半数に行かない場合は複数の政党が交渉して連立政府を樹立し、それらの政党間で話し合い、どの党のリスト1番を首長にするかを交渉して決めます。

 

総選挙(国会議員選挙)もシステムとしては同じで、各政党の候補者リストが作成され、単独で国会議員議席過半数を獲得した政党のリスト1番が首相となります。現在のスペイン中央政府は2019年11月10日に行われた総選挙の結果、社会労働党PSOEが最多数議席を得ましたが過半数に届かず、革新系UnidosPodemosとの連立して組閣したのですが、それでも合計議席数が過半数に達しておらず、法案ごとに他の政党(革新系カタルーニャ独立政党ERCや保守系バスク独立政党PNVなど)のキャスティングボートを交渉で手に入れ、その都度、苦労して国会で法案を通してきました。その間、第一野党の保守系民衆党PPや極左政党Voxがその勢力を伸ばして来ていました。

 

28M と称された今回の統一地方選、4月3日に公示、5月12日~26日の2週間の選挙運動が繰り広げられました。

お金持ちの政党は街灯に立派なポスターを掲示したり、バス停の広告スペースにドーンと広告を打ったりできますが、資金のない政党はビルの壁や店舗のシャッター脇スペースにポスターを貼ったり、日本では考えられない光景も見られます。

 

 

 

 

27日(土)はDia de Reflexion(静かに考える日)と呼ばれて一切の選挙活動禁止。当日、28日(日)はスペイン全国的に雨に見舞われた悪天候でしたが、投票率は63.91%。この数字はスペインとしてはあまり良いものではないようです。

 

5月28日の地方選は、現政府を国民がどのように見ているかを問うものでしたが、その結果は予想を覆し、スペイン全体が保守系へと方向転換している様が浮かび上がった感じです。

スペインでは各政党のシンボルカラーが決まっていて、昔からの2大政党である保守系民衆党PPは青、社会労働党PSOEは赤、ここ数年躍進目覚ましい極右政党Voxは緑、革新系諸政党は水色、その他の地方政党は様々な色。

 

2019年の地方選と今回の地方選の結果を比較した地図とグラフ。

 

この2つの地図を比較すると、2019年は赤いところが多かったのに、今回の2023年度は全体に青い色が多くなっているのが、一目見ただけでも分かります。

 

 

このグラフを見ると、PPとVOXの躍進が顕著です。

 

 

エクストレマドゥーラ、バレアレス、バレンシアラ・リオハアラゴンの6つの自治州で与党がPSOEからPPに交代、

 

スペインで最も人口の多い8都市の内、バルセロナを除く7都市、

マドリッド

バレンシア

セビリア

サラゴサ

マラガ、

ムルシア

パルマ・デ・マヨルカ

は、すべてPPが政権を取ることになりました。

 

それ以外の自治州や市の多くも、PPとVoxが連立することで議席過半数を獲得できることから、スペインの地方政治は一挙に右傾化が進むことは明らか。

 

マドリッドに関しては、マドリッド自治州は前回2021年の選挙、マドリッド市議会は前回2019年の選挙でしたが、いずれも前回の選挙ではPPがVOXとの連立で過半数を獲得していました。ところが、今回は両者ともPPの圧勝、単独で余裕で過半数を占めました。

 

 

 

 

スペイン全土に地殻変動が起きている感じです。

私たち市民の日々の暮らしにどんな変化が起きて行くのか、注目したいと思います。

 

Madre de Lucy

 

警戒事態宣言(Estado de Alarma)解除

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今日、5月9日午前零時をもって、昨年10月25日から続いていた「警戒事態宣言(Estado de Alarma)」が解除された。

 

第一回目の警戒事態宣言は2020年3月14日~6月21日まで、3カ月と1週間続いた。

第二回目の警戒事態宣言は2020年10月25日~2021年5月8日まで、6カ月半続いた。

 

2020年6月22日からデスカラダ(Desescalada)と呼ばれる段階的解除策が作られたが、7月8月はみんな気が緩んで、楽しくバケーション。

そのおかげ?で、9月半ばから第2波襲来、10月末に2度目の警戒事態宣言発令。

11月はみんなじっと我慢の子、そしてクリスマスは家族ですごしたいよねーってことで、移動制限緩和。

そしてそのツケがやって来て、1月半ばから巨大な第3波。

コロナ疲れで、新たな防止策もあまり功を奏せず、12月末から始まったワクチン接種はなかなか進まず、第3波が収束しないうちに、第4波。

5月に入ってすこしずつ下降し始めた感はあるが、今日、5月9日の時点で、まだまだ予断を許す状況ではない。

 

 直近7日間、人口10万人当たりの新規感染者数

5月6日のスペインの状況;https://cnecovid.isciii.es/covid19/

一番多いグラナダが154人、マドリッドは95.5人

5月9日の日本の状況(比較対象するため):https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/446261.pdf

一番多い大阪が70.71人

 

5月6日のスペインのコロナの状況(感染者、死者、ICU、ワクチンなど)

https://www.eldiario.es/sociedad/mapa-datos-coronavirus-espana-comunidades-autonomas-mayo-7_1_1039633.html

 

5月6日のスペイン全体のワクチン接種状況

最低1回接種した人:人口の28%

2回以上接種して完了している人:12.6%

 

スペインの場合、中央政府政令によって発出する「警戒事態宣言」とは、大まかな規制事項(夜間外出禁止/移動制限/商業活動の時間制限/会合人数の制限)の枠組みを提供すると同時に、基本的人権に抵触する可能性のある制限事項に法的根拠を与え、違反した場合に罰則を科すための法的強制力を与えるもの。

「警戒事態宣言」を基に、スペイン17自治州の政府は毎週、各自治州の感染状況をスペイン全土で共通の感染指標に基づいて、具体的な規制措置を策定し、実行する権利と義務を有する。

 

5月8日まで有効だった規制措置:ほぼすべての自治州で州をまたぐ移動は禁止(州内の移動しかできなかった)、夜間外出禁止:23h00~06h00(州によって1時間の前倒しや後ろ倒しあり)、飲食店営業時間制限(州によって大きく異なるが、18h00で閉めなければならない州もあれば、最も緩やかなマドリッド州では23h00まで営業可能)や収容制限やワンテーブルの人数制限、会合制限(自宅に人が何人まで来て良いかなど。マドリッドは同居人以外の人が個人宅を訪ねることは禁止されていた/外で会う場合の人数も最大6名までと制限されていた)が実施されていた。

 

5月9日から「警戒事態宣言」が解除された後はどうなるのか?

法的根拠や強制力がなくなるので、各自治州が基本的人権に抵触する制限措置(移動制限、外出制限、会合制限など)を実施するためには、各自治州の上級裁判所に制限措置の「合法性」を認めてもらう必要がある。同じ規制内容でも異なる州の自治州上級裁判所でその判決が異なる場合がある、実際、昨年6月21日の第1回目の警戒宣言解除後にそういうケースが発生し、混乱を招いた。今回もいくつかの自治州政府から、このような混乱を防ぐため、完全にコロナ感染が収束するまで「警戒事態宣言」の延長を求める声があったが、中央政府は延長しないと決定し、「自治州政府が自治州上級裁判所の判決に不服の場合は最高裁判所に控訴することができ、最高裁は5日以内に判決を下すべきこと、また、最高裁の判決はすべての自治州に対して同じでなければならない」という法律を作って急場をしのいだ。つまり、行政の責任を司法に投げちゃった。

 

早速、州によって裁判所の判決が異なるケースが発生。5月9日以降も夜間外出禁止を維持したい意向の3自治州(バレンシア、バレアレス、バスク)だったが、バスク自治州上級裁判所はこれを承認せず、バスク州は5月9日以降の夜間外出は自由となる。バレンシアとバレアレスでは各自治州上級裁判所がこれを認め、5月9日以降も夜間外出禁止が維持される。

 

5月9日午前零時以降の各自治州の規制は以下の記事の通り:

https://elpais.com/sociedad/2021-05-07/el-mapa-de-las-restricciones-en-cada-comunidad-a-partir-del-9-de-mayo-movilidad-libre-en-toda-espana-y-toque-de-queda-en-cuatro-regiones.html?rel=listapoyo

 

 

感染率は下降傾向にはあるものの、医療現場の緊張感はまだまだ高止まりの中、「警戒事態宣言解除」はあくまでも行政上、司法上の問題であり、コロナウイルスにとってはまったく関係ない。

 

しかし、5月9日午前零時をもって、警戒事態宣言は解除され、コロナに疲れていた人々、特に若者は、日付が変わると同時に、大挙して夜の街に繰り出し、群衆と警察が衝突する場面も発生。

https://www.rtve.es/alacarta/videos/telediario/coronavirus-aglomeraciones-fiestas-tras-fin-del-estado-alarma/5898501/

 

この映像を見ると、「Libertad!Libertad!(自由)」と叫ぶ若者たちの気持ちも分かるけれど、ソーシャルディスタンスもマスクもなしに自由を喜び合った結果が数週間後に感染者増加、ICU患者増加、死者増加という形で現れないことを、心から祈る。

  

 

新型コロナワクチンの接種に思うこと!

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4月26日にマドリッドでワクチン接種のために利用されているWiZink Centerという大型スポーツ施設でAstraZenecaの1回目接種を受けてきました。

その時の様子がちら

直後の副反応はたいしたことなく、現在は15日目まで可能性があると言われる血栓塞栓症に注意を払っている期間です。

 

既にAstraZenecaを1回打ったとはいえ、打つ前から感じていた漠然とした疑問と不安は消えることはなく、逆に増している気がします。今日は、漠然としたこの気持ちを整理してみようと思います。

 

スペインでは今、コロナ禍を抜け出すにはワクチンしかない、経済活動を回復するには一刻も早くワクチン接種して集団免疫獲得するしかない、ワクチンパスポートがないと国内はもちろん海外への移動ができないと思われている。だから、一刻も早くできるだけ多くの国民がワクチン接種をすべき!という論調がすべてのメディアの主流。 副作用による被害(死者や重篤症状)が報告されても、「ワクチンによるメリットの方がコロナのリスクをはるかに上回る」という理論で、国民は密かに不安や恐怖を抱いていてもそれを口に出すことが憚られる。

身の回りの同年代(60代)の人たちに次々とワクチン接種の通知が来て、みんなが打っている中で、自分が抱いている不安を口にしても「10年先の不安を考えてワクチン接種躊躇するより、今目の前の必要性を優先して打つべきでしょ」と言われると、返す言葉が見つからない、だから結局は自分の気持ちになんとか折り合いをつけて、4月26日に打ってきた次第。

 

是々非々で、いろんな角度からの意見を視聴してみました。

 

1)岡田正彦氏のYouTube / 2021.2.19 :

新型コロナワクチンは危険

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2536-related-articles/related-articles-492/10182-492r06.html

新型コロナのワクチン:

PfizerとModerna=人工的に作ったコロナのmRNAを脂質粒子に包んで体内に入れる。

>mRNAは改造されていて短時間で消滅せず、細胞内に残る。

AstraZenecaとJanssen=コロナDNAをAAV(運び屋ウイルスに入れ込んで)体内に入れる。

>コロナDNAは人間の細胞核内のDNAの一部を切り取ってそれて置き換わる>一旦組み込まれたコロナDNAは自分のDNA内にずっと残る。

ーー>素人にも分かりやすく説明されていて、説得力があると感じた。

 

2)岡田正彦氏のビジネスジャーナルへの投稿 / 2021.3.13:

コロナワクチン接種は中止すべし、改造RNAが体内に残り、自己免疫疾患を起こす懸念

https://biz-journal.jp/2021/03/post_213203.html

ーー>1)と同様、分かりやすい説明で説得力を感じた。

 

**岡田正彦氏:1972年 新潟大学医学部を卒業。医学博士。新潟大学名誉教授。水野記念病院理事/水野介護老人保健施設長。予防医療学を専門とし、米国心臓学会プロフェッショナル会員。米国学会誌IEEE Transactions on Biomedical Engineering 副編集長、国内学会誌「生体医工学」編集長などを歴任。2002年に臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。長年、病気を予防するための診療をおこないながら、日本人におけるがんや血管障害などの危険因子を探るための調査にも関わる。また最近は、多くの高齢者・超高齢者が薬漬けにされ、健康を害していることを実感し、自ら高齢者医療の場に身を置き、その改善に取り組んでいる。
1997年には世界に先駆けてLDL(悪玉)コレステロールの測定法を開発した第一人者。総コレステロール測定不要論を提唱、国内外で認知されている。(2013年3月現在)

 

3)国立感染症研究所からの見解 / 2021.2.24

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2536-related-articles/related-articles-492/10182-492r06.html

「新しいテクノロジーによって造られたもの(新規プラットフォームワクチン)であり、未知の部分もまだ多いが、コロナ感染のリスクと副作用のリスクを考慮した際に前者が後者を上回ることから使用しているものである。

これらの新規プラットフォームワクチンの性質のすべてが明らかになっているわけではなく, 既存ワクチンでは想定しなかったような事態も発生する可能性があるということを, ワクチン接種にかかわるすべての者が認識しておくべきである。このような状況の中で医療や公衆衛生に従事する者に求められるのは, 「新しいプラットフォームのワクチンは副反応が強いワクチン」という漠然とした理解ではなく, これらのワクチンがどのような性質を持ったワクチンで, どの程度有効で, どのような副反応がどのような頻度で起こるのか等, 既にある情報を正確に理解し、それを丁寧に説明すべきである。」

ーー>科学者としてとても謙虚な姿勢で事実だけを伝えていると感じた。

 

4)検疫官、守屋章成氏の日本医事新法への投稿 / 2021.3.27

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=16826

「4. ウイルス遺伝子がヒト遺伝子に組み込まれることはあり得ない」

接種によって人体に入ったウイルス遺伝子がヒト遺伝子に組み込まれてしまい個体や子孫に遺伝学的な影響が出る」という不安ないしデマが世間で語られているようだ。
直接接種したmRNAであれ,ベクターウイルスを介して細胞内に生成されたmRNAであれ,元来きわめて不安定な物質である。体内では数分からせいぜい数日で分解され,長く生体内に残存することはあり得ない。-70℃での保管が必要な点からも不安定さは明らかである。
分子生物学セントラルドグマを思い出してもらいたい。ヒト遺伝子DNAは,DNA→mRNA→蛋白質という一方向にしか処理されない。mRNAが逆流してDNAに再組み込みされる処理系をヒト細胞は持ち得ないし,逆転写酵素がワクチンに含まれるはずもない。
そもそも,ヒト細胞に種々のウイルスが感染するたびに,ウイルスの全遺伝子が細胞内に放出されてヒト細胞はそのコピーを大量生産させられている。ワクチン内のウイルス遺伝子がヒト遺伝子に組み込まれてしまうならば,それ以前に世界には「インフルエンザ人間」や「ノロウイルス人間」のような「ウイルスハイブリッド人間」が数多く誕生していなければ辻褄が合わない。
上記の不安はまさに杞憂であり,デマとして広がらないよう医療職から市民に適切に説明すべきであろう。

ーー>この方は検疫官でお役人。

 

5)厚生省HPのワクチンQA

mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンで注射するmRNAは短期間で分解されていきます。人の遺伝情報(DNA)に組みこまれるものではありません。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0008.html

ーー>お役所の回答

 

6)Earch School清水信吉のYouTube:2021.2.20

摂取回避方法「新型コロナとワクチンまさに知らないと不都合な真実アメリカ医療従事者の摂取拒否率。ワクチンを打つ前に!知っておくべき情報を徹底

https://youtu.be/2jPvDG355Ms

ーー>非常にまじめな投稿者であり、言及しているデータ内容には信ぴょう性を感じる。

 

7)Dr.浅井チャンネルのYouTube:2021.3.31

武田邦彦先生とコロナ座談会】ワクチンの正体とは!?(Vol.2)

https://youtu.be/DQ5lCPN8EnE

武田先生は「人工的に作ったコロナのSタンパク質mRNAを脂質粒子で包んだものや、コロナのSタンパク質DNAを運び屋ワクチンに入れ込んだもの、これら未知のもの【上記3)では新規プラットフォームと呼んでいる】を国民が知っているワクチン(無毒化した抗原を体内に入れて抗体を創り出す)と同列に呼んではいけない。全く未知のものであり、今後10年以上経たなければ、本当の意味の副作用を知ることが誰にもできない。科学者は不確定なものを不確定であると認めなければならないし、確定できないものを安全と言うのは市民をだますことだ」と言っている。

ーー>武田先生はいろんなところでいろんな意見を発信しているが、中には私としては「違うだろ」と思うものもあるが、是々非々で耳を傾ければ、科学的に「その通り」と思えるものがたくさんある。このYouTubeの発言は正に後者で、私も同感。

 

 

そして、最終的に、感じたことは、

「AstraZenecaの場合、コロナDNAは人間の細胞核内のDNAの一部を切り取ってそれて置き換わる>一旦組み込まれたコロナDNAは自分のDNA内にずっと残る」という事実を前に、今後、自分の人生の中で、このために何らかの副作用が生じた場合、ワクチン接種を決めた自分の責任、となるのだろうなぁという漠然とした思いです。

 

 

 

内閣不信任案が否決され、VOX孤立。

 

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今日も昨日に続き、国会ではVOXが提出した内閣不信任案に対する各政党代表の演説が続きました。

スペイン中が注目していたのは、PP(民衆党)のカサド党首の演説。昨年の総選挙で大幅に議席を失って以降、中道から更に右に舵を切ってきたカサド党首は、サンチェス首相率いる革新系連立政権をことごとく批判し、攻撃し続けて来ましたが、その主張は多くの部分でVOXのそれと非常に近いものでした。なので、今回の内閣不信任案に対しても、法案自体の可決はあり得ないと分かっていても、現役政権を否定する意味で賛成票を投ずるか、あるいは棄権するのではないかという思惑が民衆党内にもあったようです。ところが、国会でこの法案の審議が始まる前日辺りから、「民衆党はVOXとは違う」という論調に傾き始めたようで、結局、今日のカサド党首の演説では、VOXに対して「我々はあなた達とは違う!あなた達の党は消滅する運命にあるが、我々民衆党はここに生き続ける!あなた達のたわごとに付き合うつもりはない、今ここではっきりとNOを突き付ける!」と、かつてない強さでVOXと一線を画すことを宣言しました。このカサド党首の決別宣言は、当のVOXにとって思いがけないものだっただけでなく、すべての政党にとっても予想外だったようです。

 

スペインに17ある自治州政府の内、マドリッド、アンダルシア、ムルシアの3つの自治州政府は民衆党の知事が治めていますが、いずれも民衆党・Ciudadanos・Voxの3党による保守系連立政府であり、連立を可能にしたキャスティングボートを握っていたのはVOXでした。

カサド党首の演説を裏切りととらえたVOXはすぐさま、「これら3つの自治州政府においては今後、予算案をはじめとする法案可決は難しくなるだろう」 と民衆党に圧力をかけ始めています。

 

一方、サンチェス首相(社会党党首)は、カサド首相の演説を「民衆党がハンドルを切り、中道へ軌道修正した」 と称賛し、暗礁に乗り上げていたCGPJ(司法総評議会)のメンバー更新に関する民衆党との交渉を再開したい、と自らの演説の中で直接、カサド党首に呼び掛けました。このサンチェス首相のオファーには、以前に民衆党との合意が土壇場で破棄されたためにCGPJメンバー更新に関する法案が可決に必要な下院議席の3/5に届かず、膠着状態にあったことから、政府は10月半ばにCGPJメンバー入れ替えの基礎になる法律自体を議席数の過半数で可決するように改正するという案を示していたところ、EUから司法の最高府の構成を左右する法律をそのように変えることはEUの規則に抵触する、として待ったがかかっていた背景がありました。

 

すべての政党の代表が内閣不信任案に対する演説を終えた後、投票が行われました。賛成票はVOX議員の52票のみ、棄権票はゼロ、その他の政党はすべてNOを投じて反対が298票という結果になりました。これを受けてメディアは 「スペインの政界が極右ポピュリズムに背を向けた!」とか、「保守政党間で戦争が始まった!」とか、「社会党と民衆党が接近すると、革新系連立政権内におけるPodemos Unidosの地位が危うくなる!」などと様々な見出しを付けています。

 

そんな中、少し前まで、民衆党の国会スポークスマンだったアルバレス・デ・トレド氏の分析が興味深いです。「VOXの主張を否定すると同時に、現政権の存続にも同意しないという意向を示すには、民衆党はNOを投ずるより、棄権を選ぶべきだった。サンチェス政権の不信任を求めるアバスカル党首の演説は、現政権に対する攻撃に終始していて全く建設的ではなく、彼らの常套手段である ad hominenに満ちていた。」 と述べています。ただ、投票においては党の方針に従って、彼女自身もNOに票を入れています。

ところで、ad hominenというこのラテン語の意味するところを調べると、Wikipediaに 「ある論証や事実の主張に対して、その主張自体に具体的に反論するのではなく、主張した人の個性や信念を攻撃すること、またそのような論法で、論点をすりかえる作用をもたらす。人格攻撃論法ともいわれ、論理性や合理性を持って判断するクリティカル・シンキングにおいては論理的な誤りである誤謬のひとつとされる」 とあります。

VOXが政治の表舞台に登場して以来、彼らの論法に不快感を覚えたのはこういうことだったんだと納得。ロジカルな議論をする気は最初からなく、論点をすり替えた個人攻撃や証拠となる正しいデータに基づかない主張を繰り返す、その結果、政界や国民の中に対立と分断が生まれ、育って来ていたのですね。

 

今日、民衆党のカサド党首がVOXに対してBasta ya!(もう、十分だ!)と告げましたが、明日からスペインの政界が少しでも変わって行くのでしょうか。

 

それは誰にも分かりません。

 

おしまい。